現在は岡山県の一部でしか生息が確認されていない希少な昆虫のカミキリを、かつて生息していた鳥取県の大山(だいせん)中腹で再び定着させようとの取り組みを環境省などが進めている。その種が過去に生息していた地域に再び放つ「再導入」と呼ばれる試みで、生息域を広げて絶滅回避につなげる狙いだ。
昆虫は「フサヒゲルリカミキリ」。中国四国地方環境事務所(岡山市)によると、カミキリムシ科の日本固有種で体長15~17ミリ。かつては北海道や本州の各地で見られたが、生息する草地の減少や愛好家による捕獲などで減少。現在は高原で知られる岡山県真庭市の蒜山(ひるぜん)地区に生息しているが、個体数は多いとは言えず、絶滅の危機に瀕(ひん)しているという。
再導入を試みているのは大山中腹の桝水(ますみず)高原(鳥取県伯耆(ほうき)町)。同事務所によると、フサヒゲルリカミキリは1950年代を最後に確認されなくなったが、餌で産卵場所にもなる植物のユウスゲが生えていて、高原の草原という生育環境が蒜山地区と似ているという。
フサヒゲルリカミキリは環境省が種の保存法による国内希少野生動植物種(約460種)に指定し、2021年に農水省とともに保護増殖事業計画を作った。計画に基づき、足立区生物園(東京都)と伊丹市昆虫館(兵庫県)が蒜山地区で捕まえた個体を元に飼育下での繁殖に成功。二つの施設で増やした成虫102匹(雄と雌51匹ずつ)を昨年6月、桝水高原に設けた複数の調査区(約20メートル四方)に放した。
モニタリングを約1週間おき…