(プロ野球、17日 埼玉西武ライオンズ3―2オリックスバファローズ)
お立ち台に上がり、その手に大事そうにウィニングボールを握った。
「すごく重たいですね」
西武の右腕、山田陽翔(はると)(21)が3年目でプロ初勝利を挙げた。
延長十回に3番手でマウンドに上がり、オリックス打線を三者凡退に抑えた。
その裏、2死満塁で滝沢夏央がサヨナラ打を放った。「夏央さんなら決めてくれると、安心してベンチで見ていました。サヨナラ(勝ち)っていいですね」
堂々とした受け答えで、本拠のファンから大きな拍手を浴びた。
記者は4年前まで滋賀県を拠点に取材していた。その頃から、山田は大勢の報道陣に囲まれても物怖じしなかった。
山田は滋賀県栗東市出身。「強いチームに入るより、強いチームを倒したかった」と、高校進学では県内にとどまることを決めた。滋賀は近畿勢で唯一全国制覇の経験がない。近江高を進路に選んだ。
2年夏から甲子園で4強、準優勝、4強の好成績をおさめた。
地元のチームを投打の柱として引っ張る姿は注目の的だった。18歳以下の日本代表では主将も務めた。
高校通算30本塁打以上を放った打者としての能力も非凡だったが、山田は投手に絞った。
「打者として投手に向かっていくより、投手として打者に向かっていく気持ちの方が強く出るから」だった。
2022年秋のドラフト会議で西武に5位指名され、入団。ただ、プロ入り以降、その持ち味をすっかり見失った時期があるという。
西武の同世代には体格にも恵まれ、150キロ台の速球をガンガン投げ込むライバルたちがいる。
一方で山田はプロの投手としては小柄な175センチで、豪速球が投げられるわけではない。
「いくらやっても実力の差が…