子どもが保護者と体験活動などをすることで、平日に学校を休んでも欠席扱いにしない制度「ラーケーション」。大人の「休み方改革」を進める愛知県が先行し、親子の触れあいや学校外での学びなどの観点から、各地の自治体で広がり始めている。一方、「家庭の経済格差が影響するのでは」といった懸念もある。(井上昇、上野創)
ラーケーションは「ラーニング(学び)」と「バケーション(休暇)」から取った造語だ。
愛知県では昨年9月から、保護者との校外学習を目的に、児童生徒が自由に休む日を選択できる制度として始まった。
名古屋市立校を除く県内53市町村の公立小中高校と特別支援学校で導入され、1年に最大3日まで取得できる。まとめても分散しても取得可能だが、日時や場所を含めた学びの計画を記した「届け出」を、事前に学校に提出する必要がある。取得日は欠席にはならず、「出席停止・忌引など」と同じ扱いになる。
娘2人と史跡めぐりに
愛知県豊橋市の原田友子さん(44)は昨年12月、当時高校2年の長女・莉子さんと中学3年の次女・瑚子さんとともに、関東に出かけた。娘2人は月曜日をラーケーションの日にあて、日曜日と合わせて2日間で東京都の史跡などを巡った。日本史が好きな莉子さんが事前に行く場所を調べ、浅草の浅草寺や、東京駅に今もその跡が残る原敬、浜口雄幸両元首相の襲撃現場などを訪れた。また、浅草周辺では外国人観光客に英語で話しかける時間も設けた。
原田さんは実家の和菓子店を手伝っており、週末や祝日は仕事がある。休めるのはほぼ平日で、これまで子どもたちと宿泊を伴う遠出はできなかった。「多くの史跡を巡り、英語の実践的な勉強もできて学びの多い2日間だったと思う。子供たちにこうした体験をさせてやれて、親としてはありがたい制度です」
莉子さんは「ラーケーションはとても取得しやすかった」。届け出も、記入する項目は適度な数で負担にはならなかったという。周りの友達も、多くがラーケーションを取得した。そのため、休んだ日の授業の内容も友達同士でノートを見せ合うなどしてカバーし合う。莉子さんは「今年度も絶対に取得したい」と話した。
愛知県教育委員会は今年1~2月、県立高校の生徒や公立小中学校の保護者らにアンケートを実施した。回答した約4万9千人の保護者のうち17.3%、高校生約2万人のうち11.5%が、ラーケーションを「既に取得した」と答えた=グラフ。
取得した生徒や保護者らからは、好意的な感想が並んだ。生徒からは「学校生活にゆとりができる」「家族との会話が広がり、学校も頑張ろうという自信にもつながった」、保護者からは「新しいことに挑戦するきっかけになった」などの意見が寄せられた。
県教委の担当者は「昨年度は、導入初年度にもかかわらず多くの人がラーケーションを取得した。今年度はさらに取得率が上がるよう、学校関係者以外にも浸透させたい」と話した。
愛知に続き茨城、熊本、山口なども
導入する自治体は少しずつ増…