「よく聞いてみないと理解できない考え方や国民に誤解を受けやすい制度は、それだけでも危うい」「この点で現在の年金制度が反省すべき点は少なくない。むしろ、これこそが将来に向けての最大の弱点になるのではないか」
私が年金の取材を始めた25年前、当時の年金課長が書いた「ミレニアム年金改革」という本に、こうあった。
今国会に提出予定の年金改革法案に盛り込むべく、厚生労働省が準備してきた、いわゆる「基礎年金の底上げ」策を取材していて、思い出した。
厚生年金の保険料として集めたお金のうち、「国民共通の基礎年金」に回す割合を増やす仕組みは、かなり複雑だ。結局、自民党内で理解が得られず、法案から落とされた。最大の問題は、「よく聞いてもなかなか理解できない難しさ」だったと思う。そんな社説(4月28日配信)を書いた。
この案は当初、「マクロ経済スライドの調整期間の一致」と呼ばれていた。最初聞いたときは、何の呪文かと思った。この意味を理解できるのは、よほど年金の制度と歴史に詳しい人に限られる。
そもそも、「マクロ経済スラ…