法律が制定され、首相の諮問機関が「移転候補地」を答申したにもかかわらず、実現しなかった幻の国家プロジェクト「首都機能移転」――。答申から四半世紀余りが経った2025年、いにしえの移転候補地に再び光を当てようとする為政者が現れた。
「昔、こんな話があったでしょう。東濃に首都を持ってくる。何を言っているのだと思うかもしれないが、これはめちゃめちゃ正しい。津波はこない、地盤は安定している。リニア(中央新幹線)が加わると58分で品川から移動できる」
昨年11月、岐阜市内であった講演会でこう語ったのは、今年1月の岐阜県知事選で初当選した元経済産業省官僚の江崎禎英氏(60)だ。
江崎氏は「岐阜県の強みは富士山の西側にあること。富士山が噴火したら火山灰は東に流れる。首都圏の研究所が防災を考えてサテライトを置くなら、富士山の西側に置くべきだ」「リニアができるということは、岐阜県が東京の八王子に引っ越すのと同じ」とリニア開通と首都圏の災害リスクなどを念頭に、首都機能移転の候補地だった東濃地域の将来性に当選前から言及していた。
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2025年は「あれから10年…」になるはずだった
当選後、江崎氏は具体的な動きを見せる。
3月の県議会で、石破茂首相…