5月に世を去った唐十郎さんと共に、1960年代に始まる「アングラ演劇」と呼ばれる小劇場運動をリードした、劇作家・演出家の佐藤信さん。幼なじみでもあった唐さんがいなくなり、「風景が違って見える」と語ります。唐さんとの思い出について聞きました。
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「大鶴さん」「まこっちゃん」呼び合った若き日
3歳年上の唐さんとは子どもの頃に1年ほど、同じ児童劇団「キューピット」にいた幼なじみです。だから、演劇を始めた後に再会してからも、唐さんは僕のことを「まこっちゃん」と呼んだんですよね。僕も最初は「大鶴さん」と呼んでいました。
お互い「唐十郎」と「佐藤信」になる前から知っている間柄。何か共有できるものがあると感じていましたから、亡くなったと聞いた時は相当ショックでした。
60年代に演劇活動を始めた僕らの世代は、世間で思われているより関係が密接だったんですよ。
69年に唐さんたちが、新宿中央公園で上演を強行して逮捕された時は、僕は沈黙する演劇界に抗議する文章を書いて、演劇雑誌に投稿しました。
唐さんも僕に心を配ってくれて、稽古場を訪ねてくれたこともありました。「まこっちゃんは、やっぱり革命のことを書かなきゃ」なんて言ってくれて。
唐さんというのは、一言で言うと、日本の現代演劇を面白くした人だと思うんですよ。「面白い」というのは、ライブハウスで、デビューして間もないパンクバンドが「何をやってもいいんだ」とはじけた瞬間のような……。
■浮かんできたこと、そのまま…