「飲み会でもトイレの話をしています」。冗談かと思ったが、京都大学の原田英典准教授は本当にいつもトイレの話をしている。アジアやアフリカの衛生的なトイレがない地域で20年以上、生活環境の改善に取り組んできた。
――最近では6月にザンビアに行き、9月にも行かれるそうですね。
首都ルサカのコンパウンドと呼ばれる低所得者層が暮らす地域で、普段使っている水や食器に含まれる大腸菌を可視化するワークショップをしています。「SPLASH」というプロジェクトで、国際協力機構(JICA)の支援を得て、昨年から本格的に始まりました。
住民自ら地域を回ってサンプルを集め、大腸菌に色がつく試薬を使って検査をします。結果を見て住民たちは驚き、ショックを受ける。では、どうしたら汚染を取り除くことができるのか。生活の文脈に合わせて、一緒に考えます。「教わる」のではなく、「実感する」ことに重きを置いています。
――なぜそんなに大腸菌が見つかるのですか。
コンパウンドでは、地面に穴を掘って周囲を覆っただけのトイレが一般的です。し尿のくみ取りにはお金がかかるので、いっぱいになったらふたをして、近くに別のトイレを建てる。特に大腸菌が多く検出されるのが浅井戸の水です。住民が自分たちで掘った井戸で、十分に深くないため、トイレからしみ出たし尿で汚染されている。浅井戸の水で洗った食器も汚染されることになります。
――水道はないのですか…