「飲み会でもトイレの話をしています」。冗談かと思ったが、京都大学の原田英典准教授は本当にいつもトイレの話をしている。アジアやアフリカの衛生的なトイレがない地域で20年以上、生活環境の改善に取り組んできた。

アジアやアフリカの水と衛生について研究している京都大学准教授の原田英典さん=2025年7月23日、京都市上京区、小林一茂撮影

 ――最近では6月にザンビアに行き、9月にも行かれるそうですね。

 首都ルサカのコンパウンドと呼ばれる低所得者層が暮らす地域で、普段使っている水や食器に含まれる大腸菌を可視化するワークショップをしています。「SPLASH」というプロジェクトで、国際協力機構(JICA)の支援を得て、昨年から本格的に始まりました。

 住民自ら地域を回ってサンプルを集め、大腸菌に色がつく試薬を使って検査をします。結果を見て住民たちは驚き、ショックを受ける。では、どうしたら汚染を取り除くことができるのか。生活の文脈に合わせて、一緒に考えます。「教わる」のではなく、「実感する」ことに重きを置いています。

SPLASHプロジェクトのワークショップで、検査結果を見て話し合う参加者ら=2025年6月6日、ルサカ、藤谷和広撮影

 ――なぜそんなに大腸菌が見つかるのですか。

 コンパウンドでは、地面に穴を掘って周囲を覆っただけのトイレが一般的です。し尿のくみ取りにはお金がかかるので、いっぱいになったらふたをして、近くに別のトイレを建てる。特に大腸菌が多く検出されるのが浅井戸の水です。住民が自分たちで掘った井戸で、十分に深くないため、トイレからしみ出たし尿で汚染されている。浅井戸の水で洗った食器も汚染されることになります。

SPLASHのワークショップで、浅井戸のサンプルを集める参加者ら=2025年6月5日、ルサカ、藤谷和広撮影

 ――水道はないのですか…

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