119番通報の際に、通報者からスマホで現場の映像を送ってもらうシステムの導入が全国的に進んでいる。神奈川県内では、23の消防本部・消防局のうち、11本部・局ですでに使っており、さらに11本部・局が導入を検討していることが、朝日新聞社の調べで分かった。
現場の映像は、消防指令センター員が、傷病者の様子を見ながら救急措置の方法を指導したり、煙の色などから火事の状況を見極めたりするのに役に立つ。
すでに導入(一部は試行運用)しているのは、横浜、川崎、横須賀、藤沢、小田原、大和、逗子の7市と、箱根、葉山両町の消防本部・消防局。来年4月から共同の消防指令センターを設置する秦野、伊勢原両市の消防本部は、今年5月から映像通報システムの運用を始めた。
運用開始に先立ち、秦野市消防本部で4月24日に報道向けのデモンストレーションがあった。
119番通報を受けた消防指令センター員は、まず電話で状況を確認。必要に応じて通報者のスマホにショートメッセージサービス(SMS)で映像送信のためのURLを送り、同意を求める。通報者が同意した場合、このURLから映像を送ることができる。あらかじめアプリなどをスマホに入れる必要はない。
デモでは自宅で赤ちゃんが意識を失って倒れたとの想定で、夫役が通報後、センター員の要請を受けて映像をライブ中継。センター員が映像を見ながら心臓マッサージの方法などを伝え、救急隊員が到着するまでの間、妻役が赤ちゃんに救命措置を施した。
映像配信の操作方法はセンターからその場で説明するので、知識がなくても使える仕組みにはなっている。とはいえ、緊急時に混乱しないためにも「システムについて、できるだけ多くの人に知ってもらいたい」と、同本部の斉藤正・情報指令課長。利用方法を案内したポスターを市役所などに掲示するという。
撮影に集中するあまり、転倒したり車道に飛び出て車に衝突したりといった事故がないよう注意する必要もある。同本部では電話で的確な指示を出せるように訓練を重ねているという。
全国の消防本部を所管する総務省消防庁によると、2022年度末時点で全国の722消防本部(庁、局含む)のうち116本部が導入(同年度の映像利用は3894件)。その後も急速に増えているという。(中島秀憲)
ドラレコの可能性と課題
大阪府堺市では、スマホの映像ではなく、火災や交通事故などの現場近くを通ったバスやタクシーなどのドライブレコーダー(ドラレコ)の映像を救急や消防救急活動に活用する全国初の実証実験が進められている。
実験は、システムを開発した…