モルック(右)とミニらいとモルック

 フィンランド発祥のスポーツ「モルック」が人気だ。お年寄りや障害のある人も楽しめるようにと、ミニサイズのモルックも生まれた。魅力はどこにあるのか。

 基本はチーム戦で、モルックという木の棒を交互に投げ、ピン(スキットル)を倒す。各スキットルには1~12の数字が書かれている。倒れたのが1本だけの場合は、倒れたスキットルの数字、2本以上の場合は倒れた本数が得点になる。得点を加算し、先に50点ちょうどになったら勝ちだ。

「さらば青春の光」の森田さんが日本代表

 シンプルなルールで気軽に参加できることから国内でも親しむ人が少しずつ増えていたところ、2019年にお笑いコンビ「さらば青春の光」の森田哲矢さんが日本代表として世界大会に出場し、一気に認知度が高まった。昨年8月には欧州以外で初めての世界大会が北海道で開かれた。

 大阪で介護事業所の運営に携わっていた名和厚博さん(55)は、デイサービスで活用できるのではと考えた。だが実際にやってみると、いまひとつ盛り上がらない。モルックは500ミリリットルのペットボトルぐらいのサイズがあり、お年寄りの多くは、スキットルを倒すほど勢いをつけて投げられなかった。

 そこで、ミニサイズのモルックを作ろうと考えた。重さは5分の1に。本来はシラカバの木を使うが、割れにくいカシの木に変え、けがを防ぐため、丸みを帯びた形状にした。倒れやすいよう、スキットルの底面は少し削った。

 22年に「ミニらいとモルック」として商標登録、翌年には協会を立ち上げた。すぐに着目したのが、認知症予防活動コンソーシアムの代表を務める歌丸和見さん(50)だ。認知症になっても安心して生活できる地域づくりに取り組む大阪の団体で、イベントにミニらいとモルックを採り入れると大盛況。22年からは「オレンジリンピック」と名付けて大会を開催、これまで1千人以上が参加した。誰でも出場でき、平均年齢90歳前後のチームや、障害がある人のチームが勝ち進むこともめずらしくないという。

 介護施設や障害者施設で体験会も開いている。普段体を動かすことはあっても、競技になると熱の入り方が変わる。「次あんたの番やで」「3を倒しや」といった会話も自然と生まれる。点数の計算は脳トレにもなる。歌丸さんは「本気でできるから主体性が生まれ、役割が与えられることは生きる力につながる」と指摘する。

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