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「神戸みらい学習室」での学習支援の様子=神戸みらい学習室提供
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 家庭の経済状況にかかわらず子どもたちが学ぶ機会をもてるように、民間による学習支援事業が広がっている。神戸市中央区のコミュニティースペース「アンカー神戸」で14日、全国から学習支援の専門家や事業団体が集まるシンポジウムが開かれる。

 主催者の一つ、一般社団法人「神戸みらい学習室」は、神戸市職員らが2017年に有志で設立し、24年に法人化した。家庭の事情で塾に通えない中学生を対象に、毎週日曜に大学の施設などで学習支援を行う。

 市内の大学生や退職した大学教授らがボランティアで教える。運営費は企業からの助成金や寄付でまかなっている。

 こうした取り組みは市内で増えている。

 同じくシンポジウムを主催する神戸学習支援協議会によると、現在、市内で協議会に加盟しているのは26団体。設立した18年から約4倍に増えた。

 市によると、現在市内に子どもの学習支援を行う場所は245カ所ある。16年に市が子どもの居場所づくりに対する補助金制度をつくったことや、社会福祉協議会のコーディネーターが各区に配置され、事業を始めやすくなったことなどが背景にあるという。

 全国を見ると、00年代後半から自治体が国の補助金を使って取り組み始めた。生活困窮者自立支援法が成立した13年以降、同法に基づく学習支援が広がっている。厚生労働省によると、24年6月時点の「子どもの学習・生活支援事業」の実施自治体は602。14年度の184から10年で3倍以上になっている。

 学習支援の利用者は23年度で約4万人超。中学生が最多で、過半数を占める。生活保護のほか、就学援助費や児童扶養手当の受給世帯も対象に含まれる。

 運営は自治体直営との併用を含め、約8割がNPO法人、塾会社、社会福祉協議会などに委託されている。自治体事業とは別に、民間の助成金や寄付をもとに自主的に学習支援をしている団体もある。

 神戸みらい学習室の代表で市職員の佐々木宏昌さんは「ここ数年で学習支援を含めた子どもの居場所は一気に増えた。シンポジウムは他の団体の取り組みを知って事業を始めるきっかけにしてもらえれば」と話す。

 シンポジウムは午後1時~5時半。参加無料だが、QRコードから申し込みが必要。

 基調講演には一般社団法人「全国子どもの貧困・教育支援団体協議会」代表理事の青砥恭さんや社会活動家の湯浅誠さんらが登壇する。市が来年9月から始める中学部活動の地域移行についても議論される予定。

ニーズは多様 「地域づくり」議論を

 登壇する「全国子どもの貧困・教育支援団体協議会」代表理事の青砥恭さん(76)は元高校教員で、2009年から埼玉県内で学習支援に取り組む。シンポジウムに込める思いを聞いた。

    ◇

 大切なのは「地域の子どもを支える学習支援とはどんな支援なのか」という視点です。全国子どもの貧困・教育支援団体協議会に参加している全国94の団体はほぼNPO法人ですが、支援団体は規模によって見ている世界が違う。さらに、学習支援に企業が参入しはじめています。学習支援が画一的な物差しで測られることを懸念しています。

 子どものニーズは、進路選択や居場所、安心して学校生活を送ることなど多様です。孤立している家庭もあります。私の活動拠点では、祭りや勉強会、カフェなど人が集う機会をもうけ、地域で関心を持つ人を増やそうと試行錯誤中です。

 学習支援のゴールは、「地域づくり」だと考えています。子どもの現実をふまえ、シンポジウムでは本質的なことを考える機会にしたいです。

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