Smiley face
写真・図版
海外ルーツの子を対象にした入試を行う大学の募集要項=2025年8月14日、山本知佳撮影

 日本で暮らす外国人が増える中、外国籍など海外にルーツのある子を対象にした大学入試が広がっている。昨年度は少なくとも23大学で行われ、今年度に新たに始める大学もある。背景には、海外ルーツの子ども特有の困難がある。

 看護学科の入学者選抜に外国ルーツ選抜を新設!――

 石川県南部の小松市にある公立小松大は5月、ウェブサイトでこんな告知を載せた。

 対象は、両親の少なくとも片方が外国籍で、日本の高校を卒業した人など。選抜方法は社会人枠と同じで、調査書や志望理由書のほか、面接と日本語での小論文で合否を決める。定員は若干名で、今年度中に行う入試から始めるという。

 製造業の盛んな小松市は、外国籍の住民が県内で金沢市に次いで多く、昨年末時点でブラジル人をはじめ、約3200人が暮らす。労働者として来日した外国人が家族を呼び寄せるなどして、今後、外国籍の子どもも増えていくと予想されている。

 こうした海外ルーツの子の多くは、日本語が母語ではない。にもかかわらず、日本で進学や就職をしようとすると、日本人学生と同じ条件で選考に臨まざるを得ないことが多い。公立小松大は、新入試の狙いを「(海外ルーツの子が)勉学や就職の際にとりこぼされることのないよう、進学の機会を少しでも増やしたい」と説明する。

増える入試、国立でも

 こういった海外ルーツの高校生を対象にした入試は近年、増えている。昨年度は東洋大(東京都文京区)や大阪女学院大(大阪市)など、20大学以上が実施。今年度は少なくとも3校が、新しく実施する予定だ。

 文部科学省が、性別や国籍など多様な背景を持つ人を対象に、意欲や目的意識を重視した入試を推奨していることも増加の背景にはある。

 国立の宇都宮大でも、2016年度から国際学部で同様の入試を始めた。現在は、総合型選抜の中に「外国人生徒」枠がある。TOEICスコアなどの英語の成績のほか、800字程度の日本語の小論文や面接で評価する。これまでに、ブラジルや中国などにルーツのある学生25人以上がこの選抜制度で入学した。

 中村真学部長は、他の多くの日本の学生にとってもメリットがあり「多様なルーツの学生が共に学び、活動することで、4年かけて国際的な感覚を身につけられる」と話す。

写真・図版
宇都宮大学の中村真・国際学部長=2025年4月16日午後2時51分、宇都宮市、山本知佳撮影

学力あってもテストで実力「発揮しづらい」

 海外にルーツのある子どもは…

共有