九鬼産業の白ゴマ

 日本の「食」に欠かせないゴマだが、国内消費量の99.9%以上を輸入に頼っている。そんな現状を少しでも変えたいと、ゴマ製品の総合メーカー九鬼(くき)産業(三重県四日市市)が「三重県産ごま栽培プロジェクト」を進めている。10年目を迎える取り組みで積み上げてきた成果と、そこから見えてきた課題とは。

 「九鬼の純正胡麻油(ごまあぶら)」で知られ、創業明治19(1886)年の同社にとって、ゴマは必要不可欠な存在だ。

 だが、国内の年間消費量約17万トン(2023年)に対して、国産ゴマの生産量は約80トン。自給率は0.05%しかない。

 アフリカからの輸入が大半だが、世界情勢の影響で供給は不安定な状態が続いている。

 「かつては輸出国だった中国が、消費拡大でゴマの輸入国に転じた影響も大きい。さらに、ナイジェリアなどの主要産地は換金作物としてゴマ栽培をしているので、もっと実入りがいい別の作物に転換してしまう恐れもある」と、同社技術顧問の近藤和夫さんは指摘する。

 将来も安定して確保するためには、国産ゴマの自給率を高める必要がある。だが、コメなどの主要作物と違って、ゴマは収穫まで手間がかかるのに機械化栽培の技術が未確立で、栽培に使用可能な登録農薬もなく、さらに温暖多湿な日本の気候条件や機械化栽培に適した品種がない、という状態だった。

 「ゴマはマイナーな作物だけに、世間の関心は薄い。最も必要としている会社が率先して取り組むことが必要と考えた」と、開発部長の藤澤英二さんはいう。

 プロジェクトのスタートは、2016年。県内21の農業者・福祉事業所と連携し、7ヘクタールで栽培を始めた。それまでも同社は、ゴマ油の製造過程で出る搾りかすなどの肥料化に取り組む中で、子会社の農業生産法人「九鬼ファーム」(大紀町)でゴマ栽培を通じて肥料の有効性を確認するなど取り組みを進めていた。その経験を生かした上で社内にチームを作って3人の専任担当者を配置。三重県などの協力を得て栽培に取り組む農業者の開拓や栽培方法の講習、手引きの作成を進めた。

 栽培の機械化プロジェクトも立ち上げ、大豆用のコンバインを利用した収穫技術や乾燥機を使った乾燥・調整技術を導入。カメムシ対策の殺虫剤などの農薬の登録も拡大した。9年間の取り組みで栽培技術も向上し、農業者の関心も高まり、24年には栽培者数は3倍近くの61、栽培面積は21.7ヘクタールに広がり、出荷量3525キログラムと約1.8倍まで増えた。全国的にも、鹿児島県に次ぐ生産県になりつつあるという。

「道半ば」のゴマ栽培

 課題も見えてきた。栽培に参加したものの湿害や雑草害で断念した農業者もいるという。

 「温暖多湿な環境に対応できる品種の改良など、栽培技術を改良する挑戦は続いている。コンバインを使った収穫でも、ゴマは実がこぼれやすいため、その対策など課題は残っている」と近藤さんは気を引き締める。

 「道半ば」という国産ゴマの栽培拡大だが、それでも三重県に限らず、隣接する岐阜県、滋賀県など、全国各地に栽培が広がりつつある。さらに、国産ゴマのニーズは高く、消費者が求める需要に供給が追いついていないという。

 近藤さんは「ともに苦労してきた農業者や県などの関係機関との信頼関係も強まったし、社員の技術力も高まった。日本のゴマの自給率向上にこれからも貢献していきたい」と意欲的だ。

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