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平和記念公園の慰霊碑前にはあちこちに傷などが残る黒い「被爆ピアノ」が置かれ、市長のあいさつの後、「イマジン」などの曲が演奏された。原爆の日を前に、祈りを捧げに訪れた関係者や外国人観光客など多くの人が足を止め演奏に聴き入っていた=2025年8月5日午後4時49分、広島市中区、小宮路勝撮影

 広島は6日、米国による原爆投下から80年を迎えます。世界で紛争が相次ぎ、核兵器を使ってはならないとするタブーが脅かされている今、私たちに何ができるのか。犠牲者を悼み、平和を願う営みを詳報します。

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■■■8月5日の動き■■■

18:00

犠牲者を慰霊 かがり火

 原爆ドームの横を流れる広島市中区の元安川で5日夜、原爆の犠牲者らを慰霊するかがり火がともされた。

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原爆ドームの横を流れる元安川でともされた、原爆の犠牲者を慰霊するかがり火=2025年8月5日午後7時30分、広島市中区、浅野哲司撮影

 平和記念公園の「平和の灯」から採られた火が燃え上がるなか、参加者らは尺八などを演奏して犠牲者を悼み、平和への願いを届けた。

【3社合同企画】被爆者3564人アンケート

朝日新聞、中国新聞、長崎新聞の3社は合同でアンケートを行いました。被爆者たちが私たちへ託した言葉をみる。

17:30

イラン大使「核兵器は決して保有しない」

 イランのペイマン・セアダット駐日大使は、任期3年目で初めて式典に出席する前に広島市内のホテルで会見した。「平和記念資料館を訪れ、原爆が落とされた都市で実際に空気を吸うことで、いかに人々が苦しんだかを思い、悲しみで胸がつぶれる」と語った。

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記者会見するイランのペイマン・セアダット駐日大使=広島市、石合力撮影

 イスラエルと米国が、イラン攻撃の理由に掲げた自国の核兵器開発疑惑について「核兵器を含め、いかなる形の大量破壊兵器も我々は決して保有しない。宗教指導者の教義上も完全に禁じられている」と否定した。

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 イラン攻撃時にトランプ米大統領が、広島、長崎に言及したことについて「無意味で非人道的な発言で、被爆者の尊厳に反するものだ。攻撃は完全に違法で国際法に違反する」と批判した。

17:00

パレスチナ駐日代表「世界は団結を」

 広島市から式典開催の通知を受け、初めて参加する駐日パレスチナ常駐総代表部のワリード・シアム常駐総代表(大使に相当)。平和記念公園での献花の後、朝日新聞の取材に応じた。「広島の犠牲者に追悼の意を表し、パレスチナを支援してくれる人々に感謝を示すために来た」

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駐日パレスチナ常駐総代表部のワリード・シアム常駐総代表=広島市、石合力撮影

 式典には、ガザでパレスチナの市民ら6万人以上を殺害したイスラエルの大使も出席する。「ガザでジェノサイド(大量殺害)を続ける彼らは、何年も広島を訪れているが、より多くの人を殺害すること以外、何の教訓も学んでいない」と批判した。広島に同行した妻はガザ出身で、2日前にいとこが持病の薬が手に入らず、病死した。食料の搬入が制限されるなか、ミルクの値段は10倍以上になっているという。

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 「ジェノサイドに対抗するために世界中の人々は団結すべきだ。過激な考えを持つ指導者の声ではなく、人々の声こそが届くべきだと思う」

17:00

核禁条約 国会議員ら議論

 被爆者や与野党8党の国会議員らが5日、広島市内で「被爆80年、日本はどのように核軍縮を主導するか」をテーマに討論した。

 政府は、核兵器の開発や使用などを全面的に禁じる核兵器禁止条約に参加していない。日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)の田中熙巳(てるみ)代表委員(93)は「速やかに参加してほしい」と訴えた。

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 政府は3月の核禁条約第3回締約国会議へのオブザーバー参加も見送ったが、与党・公明党の斉藤鉄夫代表は「(来年の第1回再検討会議への)日本のオブザーバー参加を粘り強く働きかけたい」。自民党の寺田稔衆院議員も参加に理解を示した。

 国民民主党の玉木雄一郎代表は、核保有国も非核保有国も加入するNPT(核不拡散条約)第6条の「核軍縮義務」に触れ、「義務に改めて思いを致すことで、核禁条約をNPTの中に位置づけられるのでは」と提言。社民党の福島みずほ党首は「(核禁条約会議への)オブザーバー参加ではハードルが低すぎる。条約批准に向け超党派で議論を進めたい」と述べた。

15:00

核実験禁止条約の準備委事務局長が会見

 包括的核実験禁止条約(CTBT)の発効に向けた準備にあたる、包括的核実験禁止条約機関(CTBTO、ウィーン)準備委員会のロバート・フロイド事務局長が5日、日本記者クラブ(東京)で記者会見した。被爆80年となる今年について、核兵器のない世界に向けて「決意を新たにする年だ」と訴えた。

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記者会見する包括的核実験禁止条約機関(CTBTO)準備委員会のロバート・フロイド事務局長=2025年8月5日、東京都千代田区の日本記者クラブ、佐藤達弥撮影

 フロイド氏は、6日に広島、9日に長崎で開かれる平和式典に出席する。会見では、核兵器をもつロシアのウクライナ侵攻などを念頭に「高まる地政学的な緊張の中、憂慮すべき兆候がみられる」と指摘した。

 その上で、CTBTに178カ国が批准していることから「CTBTはほぼ普遍的な(各国の)支持を得ている」とし、核実験や核兵器のない世界に向けて「たゆまぬ歩みを続けていく」と力を込めた。1996年に国連総会で採択されたCTBTは、核兵器を持つ米国や中国、インドなどが批准しておらず、いまだに発効していない。

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14:00

「広島には、いまも遺体が…」

 広島市で開催中の原水爆禁止世界大会広島大会の一環で、被爆者の切明千枝子さん(95)が広島市中区で体験を語った。

 米軍が原爆を投下した1945年8月6日当時は15歳だった。大やけどを負って女学校まで戻ってきた下級生たちは全身に水ぶくれができ、それが破れると皮膚が垂れ下がった。

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被爆体験を証言する切明千枝子さん=2025年8月5日午後2時7分、広島市中区、興野優平撮影

 下級生がこと切れると、切明さんは校庭に穴を掘って遺体を焼いた。金縛りにあったような感覚でその場に立ち続け、標本のようなきれいな遺骨が見えて初めて、涙がこぼれたという。

 「広島のまちには、いまも遺体が埋められたまま」と切明さん。「時々でいいから、ちょっと心の中で思い出してみてください。無残な死を遂げた人の思いが、みなさんの心の中で生き返ると思うの」と話した。

13:30

「命を守る」共同声明

 被爆者団体と日米韓のカトリック教会の司教らが5日、核兵器廃絶をめざす平和集会を、広島市中区のエリザベト音楽大学セシリアホールで開いた。昨年の日本被団協のノーベル平和賞受賞を祝い、「すべての命を守るための連帯」をめざす共同声明を発表。核兵器禁止条約の批准拡大を後押しするとうたった。

 声明では「対話と協働による平和と連帯を追求する非暴力の基礎」を国際社会に求めた。

 ローマ教皇庁駐日大使のエスカランテ・モリーナ大司教はこれまでの教皇の核兵器廃絶への取り組みを振り返り、「戦争は人間のしわざです」というヨハネ・パウロ2世(1978~2005年在位)の言葉を紹介した。

10:30

韓国人犠牲者を慰霊

 広島市の平和記念公園にある「韓国人原爆犠牲者慰霊碑」の前で5日、朝鮮半島出身の原爆犠牲者の慰霊祭があった。碑が建てられた1970年から始まり、今年で56回目。在日本大韓民国民団広島県地方本部が主催した。

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韓国人原爆犠牲者慰霊祭で慰霊歌を歌う女性たち=2025年8月5日午前10時57分、広島市中区の平和記念公園、上田潤撮影

 韓国の釜山から来た釜山情報高2年の曺材源(チョジェウォン)さん(17)は平和記念資料館をみて原爆で何が起きたかを初めて知ったという。「原爆を使用して市民を大量殺戮(さつりく)したのは絶対よくないと考えます」

 1歳のとき広島で被爆した在韓被爆者の鄭源述(チョンウォンスル)さん(81)も参列し、「核兵器は使ってはならないし、あってはならない。核のない朝鮮半島、核のない世界が早く実現して欲しい」と語った。

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10:00

韓国大統領がメッセージ 韓国人被爆者に

 韓国の李在明(イジェミョン)大統領は5日、広島への原爆投下から6日で80年を迎えるのを前に、SNSへの投稿で韓国人の被爆者について「故国でもない他国で歴史の荒波を二重三重に経験し、苦痛を受けた原爆被害の同胞と遺族の皆様に深い哀悼と慰労の言葉を申し上げる」と書き込んだ。

 また、韓国に戻った被爆者のための「原爆被害者支援特別法」によって実質的な支援基盤が整ったが、まだ不足している部分が多いとし、「原爆の傷痕を癒やすために引き続き努力していく」とした。

 そのうえで「戦争による惨状が繰り返されないよう、平和の価値をより強固に守っていく」とした。

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