NGO核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)のメリッサ・パーク事務局長が4日、広島市内で朝日新聞のインタビューに応じた。80年前の米国による広島、長崎への原爆投下について「人道に対する罪だ。戦勝国がだれを訴追するかを決めるなかで、訴追されなかったが、当時の法体系でも明らかに国際法に反するものだった」と述べた。
パーク氏は、オーストラリアの元閣僚で、政界入り前に国連の国際法務専門家として、コソボやパレスチナ自治区ガザ、国連本部などで勤務した経験を持つ。
パーク氏は「原爆投下は戦争を終結させ、地上戦による犠牲を回避するために必要だったという米国側の何十年にもわたるプロパガンダは正しいものではない。投下は(当時の)ソ連に原爆の威力を見せつけるためのものだった」と語った。
その上で、核大国ロシアのウクライナ侵攻や、イスラエルと米国によるイラン核関連施設攻撃について、「核を保有していることで大胆な行動に出る『核のいじめ』だ。核兵器は、脅迫と強制のために使われており、安定や安全をもたらすどころかその逆だ」と指摘。「核兵器禁止条約によって法的、倫理的な締め付けを強めるしかない」と語った。
核実験の被害者救済や汚染除去などを目的に基金を設置する同条約の取り組みでは、拠出をめぐり、核実験した当事国の責任を問う声が出ている。パーク氏は被爆者援護の経験を持つ日本に対し、条約への参加を改めて要請。「議会が政府を動かしてオブザーバー参加させた例もある」と述べ、来年11月からの第1回条約再検討会議に向けて、オブザーバー参加に賛成する日本の主要政党が、議会を通じて少数与党の政府に参加を促す可能性に期待を示した。
パーク氏は2023年9月から現職。ICANは、核兵器の非人道性を国際社会に広め、核禁条約の成立を推進したとして17年にノーベル平和賞を受賞した。