「配管のどこから水漏れが起きるかわからない」と老朽化の現状を説明する放射光科学研究所の島田賢也所長(左)=2025年2月6日、広島県東広島市、増谷文生撮影

 東京大が今春の入学者から、学部の授業料をこれまでの1・2倍に値上げする。注目されているのが他の国立大への波及だ。広島大の越智光夫学長は昨春の会見で、財務状況の悪化を理由に、授業料改定を検討していると述べた。同大を訪ねて越智学長に検討状況を確認するとともに、財務の悪化で悪影響が出ているという教育・研究の現場を取材した。

 越智学長は昨年5月の定例会見で対応を問われ、「予算が足りず、直すべき建物などに手を付けられない状況が続いている。授業料については2年以上前から上げる、上げないも含めて調整している」と述べた。東大が今春の入学者から、文部科学省が定める国立大の標準額である53万5800円の授業料を上限(1・2倍)の64万2960円に引き上げる検討を進めていると明らかになった直後のことだ。

 広島大全体の予算を検討する際に授業料も対象とするという意味だったが、一部で「引き上げを検討」と報道された。これを機に、同大の学生有志が値上げ反対を訴える署名活動をオンラインで展開。学外も含め1万7千筆超の署名を受け取った越智学長は、7月の会見で「具体的な検討はしていない」と火消しにあたった。

引き上げ「今すぐは考えていない」

 今年2月上旬、越智学長に改めて授業料改定の検討状況を質問した。

 「今すぐに引き上げることは考えていない」。答えは即座に返ってきた。だが、こう続けた。

 「国からの運営費交付金が減り、経費削減も限界に近い。光熱費や人件費の上昇で、学生の教育などに使うために積み立てたお金を取り崩した。こうした状況が続けば、値上げを決断する時期が来る可能性はある」

 広島大の運営費交付金収入は…

共有
Exit mobile version