阪神甲子園球場=2025年8月17日午後2時18分、兵庫県西宮市、朝日新聞社ヘリから

 全国高校野球選手権大会(朝日新聞社、日本高校野球連盟主催)への出場を途中辞退した広陵高校(広島市)が、今年3月に日本高野連から「厳重注意」を受けた部員間の暴行事案について、再調査に向けた第三者委員会を設置することを決めた。同校が高野連に報告した内容と被害者の元部員の訴えに食い違いがあり、元部員の父親は「再発防止に向け、真相を明らかにしてほしい」と話している。

 広陵高校の硬式野球部では、別の元部員も部内での暴力・暴言を訴えたが、学校側が「確認できない」としたため、今年6月に別の第三者委が設置された。二つの事案は大会開幕後にSNSなどで広がり、同校は選手権大会の出場を1回戦終了後に辞退。今月20日付で中井哲之監督が退任した。

 新たに第三者委を設置するのは、元部員が今年1月に部で禁止されているカップラーメンを寮で食べたことを理由に、当時の2年生4人にほおや胸をたたかれたり、胸ぐらをつかまれたりしたとして、同部が日本高野連に厳重注意されていた事案。元部員は4月に転校し、6月に広島県警に被害届を出した。

 元部員の父親によると、学校の説明と大きく違うのは集団暴行と捉えるかどうかだ。

 父親によると、元部員は「大勢に囲まれて正座させられ、入れ代わり立ち代わりで計100発以上も殴る蹴るの集団暴行を受けた」と説明した。暴行を受けた翌日に実家に戻り、涙ながらに家族に打ち明けたという。胸の打撲で約2週間の安静加療と診断された。

 父親によると、10人近い部員が取り囲んで正座させ、その前後に少なくとも6人が暴力を振るったとされる。事実関係について学校とメールでやり取りし、1月末時点ではお互いの認識が大筋で一致したと受け止めていたという。

 だが学校は2月、広島県高野連に対し、部員4人が集団ではなく個別に暴力を振るったと報告した。7月に県高野連に問い合わせて食い違いに気づいたという。父親は「いつ人数が変わったのか説明がなく、まったくわからない」と話す。

 元部員側は「中井監督から強圧的な発言を受けた」と訴えるが、学校は否定し、この点でも両者の主張は食い違う。

 元部員は暴力事案があった数日後に寮に戻った際、中井監督から「高野連に報告したほうが良いと思うか」「2年生の対外試合がなくなってもいいんか」と言われたと訴える。

 父親は「息子は怖いと感じ、もう広陵にいられないという気持ちが固まった」と話す。家族で編入先を探し、元部員は4月に広陵から転校した。

 学校側とのやり取りは5月で途切れており、再調査についても連絡はないという。父親は「息子のように暴力で追い詰められる部員が二度と出ないようにしてほしい」と訴える。

 学校は朝日新聞の取材に対し、「保護者への説明が不十分だった」とした上で、集団で取り囲んだことを否定し、暴行の回数も数発だったと説明。関与した部員の人数などを保護者に示したメールは「途中経過であり、最終段階のものではなかった」とした。

 中井監督の発言については「生徒・保護者の主張される文言通りのやりとりはなかった」とした。

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