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観客でにぎわう阪神甲子園球場=2025年8月17日午後2時20分、兵庫県西宮市、朝日新聞社ヘリから、恵原弘太郎撮影

 23日に幕を閉じた第107回全国高校野球選手権大会の閉会式で日本高校野球連盟の宝馨会長は大会途中に広陵(広島)が出場辞退するに至ったことに触れ、「経緯をしっかり検証し、より適切な対応策について検討する」と話した。

 部内の暴行事案などを理由に、2回戦を前に出場辞退した広陵は、暴行について日本高野連に報告し、今年3月に「厳重注意」を受けていた。

 加盟校から不祥事の報告があったとき、日本高野連はどのように対応しているのか。

 広陵の辞退が決まった10日の記者会見で、宝会長は「本当に細かいものから報告してもらって、年間1千件以上になる」と話した。

 日本高野連は内訳を明かしていないが、指導者や選手間の暴力、暴言だけでなく喫煙、飲酒、ハラスメント、SNSを使った不適切な行為などがある。

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 高校野球は日本学生野球協会が定める「日本学生野球憲章」に基づいて活動している。

 部内で暴力や犯罪行為などの不祥事があると、学校は各都道府県連盟を通じて日本高野連に報告。日本高野連は報告をもとに、外部の弁護士も入る審議委員会を開く。「注意」「厳重注意」などの措置は日本高野連が行い、対外試合禁止や指導者の謹慎などの処分が必要と判断した場合は、日本学生野球協会の審査室会議に上申する。

 法令や「学生野球の基本原理」に反しているかどうかが主な基準になる。

 外部の指摘などで不祥事を報告していないことが判明すれば、原則、指導者は「報告義務違反」で最低1カ月の謹慎処分を受ける。そのため、軽微な事案でも報告することで件数が多くなる、という背景がある。

 広陵を「厳重注意」とした暴行事案は1月、寮で禁止されているカップラーメンを食べたことを理由に、当時の2年生4人が1年生のほおや胸をたたいたり胸ぐらをつかんだりした、という報告内容だった。

 部に対する「厳重注意」に付随する指導として、4人には1カ月以内に開催される公式戦には出場しないよう通知された。

 憲章に基づく規則で「厳重注意」は原則公表しないと定められているため、その時点で日本高野連や学校からの発表はなかった。日本高野連の井本亘事務局長は「被害者、加害者、関係者を含めて、部員であれば未成年。個人攻撃されないように保護の観点から原則公表はしない」と説明する。

 措置や処分の判断基準については「過去の例に照らし合わせ、平等公平に審議している」。

 広陵への「厳重注意」の措置が適切だったかについて、井本事務局長は23日の閉幕後の取材で「まずはルール(学生野球憲章)を定めている日本学生野球協会がどう考えるかというところの話になる」とした上で、「より適切な対応を考えていく必要がある。今後きちっとやっていきたい」と話した。

 1946年に制定された日本学生野球憲章は、時代とともに改正が繰り返し行われてきた。

 かつては部員一人の不祥事でも対外試合禁止になるなど、部全体への「連帯責任」の毛色も濃かったが、今年4月、不祥事案に関係のない部員に不利益を科さないための運用内規が設けられた。

 違反部員数が4人以上または部員総数の20%以上の場合は「注意・厳重注意」、違反部員数が10人以上または部員総数の50%以上は「対外試合禁止」とした。

 広陵の件では、SNSで不確定な情報をもとに部員らを誹謗(ひぼう)中傷するような投稿が広がった。今年6月にスポーツ基本法が改正され、29条で、暴力やハラスメント、性的な言動、インターネット上の誹謗中傷といった「暴力等の防止」が明記された。

 宝会長は広陵の事態を「深刻に受け止めている」とした上で、「暴力・暴言やいじめは何も生み出しません。改めて全国の指導者、部員のみなさんに強くお伝えしておきます」と話した。

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