唐破風屋根が目印の容輝湯=2025年4月18日午後4時31分、大津市栄町、高田誠撮影

 「地域の社交場」と言われる銭湯。緑色の大きな曲線型の唐破風(からはふ)屋根の下ののれんをくぐると、創業93年の銭湯は、新感覚の社交場に生まれ変わっていた。大津市栄町の容輝湯(ようきゆ)で番台に立つ坪久田七海(つぼくた・ななみ)店長(25)は「いろんな人に出会えてめっちゃ楽しい」と言う。

 JR・京阪石山駅から徒歩7分、容輝湯は住宅街にある。男女の浴室それぞれ最多で10人が腰掛けられ、こぢんまりした浴槽は浅、深、ジェット、水(寒い時期は薬)の4種類。地下水をまきで沸かした湯は疲れた体に優しく感じる。連日、老若男女の客でにぎわう。

 「つぼソング」「れいなの!喫茶探訪手帖(てちょう)」――。壁面のタイルに坪久田さんらスタッフ4人がそれぞれA4紙に書いた「容輝湯通信」がラミネート加工され貼られている。好きな音楽や喫茶店の紹介、筋トレ体験記など毎月変わる話題は楽しく、湯につかりながら読みふけってしまう。

 容輝湯が今春、俳句大会を企画したら、小学生からお年寄りまで湯船でひねった約100点の応募があり、入選作は壁面に貼られた。これまでは「男女の距離を縮めたい」といった客が投書した悩みとスタッフの回答がずらりと紹介されていた。

 入浴前に客数人とスタッフが一緒にランニングする「ヨウキユラン」は水、土曜日の夜、琵琶湖沿いなど10キロほど走ることが多い。雨の中を走ってきた滋賀県湖南市の会社員南清隆さん(29)は「ランのために車で40分かけて通っています」と息を弾ませた。

 フロント形式の番台付近には「スタッフおすすめレコード&本」のコーナーがあり、蓄音機が置かれ、シャツやステッカーなどの独自グッズやご当地ドリンク、地元農家の野菜が並ぶ。新たに設けられた縁側では、「お花見」が催され、団子も用意された。自然に会話が始まる雰囲気がある。

 坪久田さんは「私ってこんな…

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