不登校の中学生向けに柔軟なカリキュラムが組める、県内初の「学びの多様化学校」(延岡市)で16日、第1回の卒業式があった。2024年4月の開校と同時に入学した3年生5人が卒業。新たな一歩を踏み出した。
酒匂(さこう)慎一郎校長(54)が「人の運命はレールの上を行くものではない。人生の主人公は自分。チャレンジを続けてほしい」と式辞。甲斐麗七(れいな)さん(15)が「初めは不安だったが、少しずつ自分を出せるようになった。私たちを第一に考えてくれた学校や先生方に、感謝したい」と答辞を述べた。
式では、酒匂校長が高校時代からの趣味というギターを手にし、「世界に一つだけの花」を歌った。ほかの教職員も、卒業ソングの定番「BELIEVE(ビリーブ)」をハンドベルと合唱で演奏。それまで目頭を押さえていた保護者も、卒業生も、笑顔で手拍子を送った。
酒匂校長は「他人と比べず、自分を大事にしてほしいという思いを込めて歌った。我々にとっても手探りの1年だったが、子どもたちや地域と一緒に(この学校を)作ることができた」と振り返った。
卒業生の竹迫心美(たけざこことみ)さん(15)は「不登校で悩んだ者同士、何でも話せた。通うようになって親にも『明るくなった』と言われた。ここで学んだ人との関わりやストレスとの付き合い方を生かし、人生を歩んでいきたい」と話した。
学校によると、卒業生は全員進学希望。4月には新たに4人の仲間を迎え、計10人になる。
同校は正式には市立南浦中学校の分教室。不登校の増加を受け、学びを届ける一助として市が設置した。一般の中学の授業数が年間1015時間のところ、教科を連結して770時間に圧縮。子どもたちの負担を減らしつつ、必要な学びを得られる工夫をしている。宮崎市でも4月から開校する。