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大修理が始まる前の根本中堂=2014年6月、大津市、朝日新聞社ヘリから
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 約60年ぶりの大修理が進む世界遺産・比叡山延暦寺(大津市)の総本堂、根本中堂(こんぽんちゅうどう、国宝)の銅板葺(ぶ)きの屋根が、江戸時代は黒く塗られていたことがわかった。滋賀県が1日発表した。当時の彩色や金箔(きんぱく)の痕跡も見つかり、県は修理期間を2030年9月まで約3年延長。発見に基づく壮麗な姿でよみがえらせる。

 根本中堂は1571年、織田信長の焼き打ちで焼失し、1642年に徳川3代将軍・家光が再建。屋根は板を重ねた「栩(とち)葺き」だったが、江戸後期の1798年に銅板葺きに変更された。

 県によると、屋根のふき替えのため取り外した江戸時代の銅板から、黒色塗装が見つかった。植物性油性塗料を使う「チャン塗り」と呼ばれる技法で、耐久性を高める狙いとみられ、名古屋城大天守などで例があるという。銅板葺きの屋根は緑青(ろくしょう)と呼ばれるサビに覆われた緑色の印象が強いが、ふき替え当初は黒く輝いていたとみられる。

 外壁は残っていた塗膜などから軒まわりや組み物は橙(だいだい)色、それより下は深い赤色と判明。軒下からは、1642年の再建当時の彩色や金箔(きんぱく)の痕跡も見つかった。

 県は総事業費を約15億5千万円増の73億4千万円とし、今回の大修理で屋根の銅板を黒く塗り、外壁の色も塗り分ける。担当者は「江戸時代は、これまでの認識をはるかにしのぐ壮麗な外観だったことがわかった。痕跡を忠実に復元し、往時をほうふつとさせる姿を再現したい」と話す。

 県は2016年から、再建後7回目の大規模修理を実施。根本中堂と廻廊(国重要文化財)の屋根のふき替えや、塗装の塗り替えなどを進めている。

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