準決勝3日目、延長四十五回でも決着がつかず、0が並んだ球場前のホワイトボードを撮影する観客=2014年8月30日、明石トーカロ、伊藤進之介撮影

 高校の軟式野球で、いまも語り継がれる試合がある。2014年8月の全国選手権大会の準決勝、中京(岐阜)―崇徳(広島)だ。継続試合を3日間繰り返しても、決着はつかなかった。

 そして4日目。延長五十回、中京がついに得点を挙げ、3―0で勝った。同じ日にあった三浦学苑(神奈川)との決勝も中京は勝ち、7度目の優勝を果たした。

 当時も中京を率いていた平中亮太監督(43)がいま思うことは。

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試合前日、「落とし穴」にはまる

 崇徳との延長五十回はチームの財産です。点を与えなければ五十回かかっても負けることはない。地道にアウトを積み重ねた先に勝利があった。

 今も練習で「五十回を耐えた先輩がいる。九回なんて大したことない」と言っています。

 あの時、試合前日が休養日で、割り当てられたグラウンドで練習したんです。終わった後、グラウンドに崇徳が来たので、しばらく練習を見ていました。

 言葉は悪いですが、ゆるい印象でした。守備でミスが起こるから、その辺を攻めていけばと思いました。

 準々決勝までの崇徳のデータもあったのですが、ミーティングでコーチから「(データ分析は)どうしましょうか」と聞かれ、「必要ないと思う」と答えてしまった。

 それが落とし穴でした。崇徳は練習でわざと雑に見せていたようです。

 試合が始まると、相手の石岡…

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