引き取り手がない遺体の対応に、自治体が困惑しています。身元がわかっていて、家族や親族の所在や連絡先もある程度は把握できているのに、引き取る人が見つからない事例が、急激に増えているといいます。何が必要なのか、引き取り手がない遺体の問題に詳しい長野大学の鈴木忠義教授(社会福祉学)に聞きました。
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――身元がはっきりしているのに、遺体を引き取る家族や親族が見つからない事例が、急激に増えているようです。神奈川県横須賀市の場合、そうした事例は昔は1件もない年も多かったのが、1990年代から増え始め、近年は年間50~60件にのぼるといいます。
亡くなった後に誰にも遺体を引き取られないリスクは、すでにレアケースではなく、一般的に起こりうるリスクになってきていると思います。
そう考えると、ほかに対応する制度がないなかで、自治体が最後のセーフティーネットとして対応している現状では不十分で、新たに使える制度をつくっていくことが求められつつあるのではないでしょうか。
――現状、明治時代に成立した古い法律など複数の仕組みを使って、自治体が火葬や埋葬を実施することになっていますね。
身元不明で、葬祭を執行する人がいない場合は、「行旅(こうりょ)死亡人」として、死亡した地の市町村長が火葬や埋葬を行うことになります。身元が判明していても葬祭を執行する人がいない場合は、墓地埋葬法で、やはり市町村長が実施することになっています。
――その費用は誰が負担するのですか。
亡くなった人の遺留金で充当できれば充当しますが、できない分は自治体が費用負担をします。あるいは、亡くなった人がもともと生活保護を受けていた人だとか、そうでなくても、アパートの大家さんや地域の人など第三者が葬祭を行うという場合は、葬祭の費用を生活保護の「葬祭扶助」から給付するという仕組みもあります。この場合は国と自治体が費用負担することになります。
――身元がわかっていて、自治体が家族や親族に遺体の引き取りを打診しても拒まれる事例が増えているのだから、引き取りを義務づけるという対応の方向性もありそうです。
そこに強制力を働かせることは、問題が大きいんじゃないかと思います。
――なぜでしょうか。
遺体については現状そういう…