祭壇に手を合わせる人たち=2025年5月14日午前10時21分、福岡県筑紫野市、小玉重隆撮影

 終戦後、中国大陸などから引き揚げる際に性的暴行で妊娠した女性が中絶手術を受けた「二日市保養所」の跡地で14日、水子供養祭が開かれた。済生会二日市病院(福岡県筑紫野市)が主催し、系列の特別養護老人ホームの一角に関係者の遺族や市民ら約30人が参列した。

 博多引揚援護局史によると、保養所は1946年3月に開設。博多港(福岡市)に引き揚げてきた女性に医療を提供した。46年3~12月で患者数は380人にのぼり、うち「不法妊娠」は213人と記録されている。

 叔母が二日市保養所で看護師をしていたという岡本清美さん(76)=埼玉県ふじみ野市=は約20年前から慰霊に訪れているといい、「戦後80年になり、当時を知る人もほとんどいなくなっている。しっかりと記憶を引き継いでいく必要がある」と語った。

 福岡市の主婦、田中ゆかりさん(58)は母が引き揚げ者。数年前から引き揚げの歴史を調べるなかで保養所について知り、参列した。資料を調べても手術を受けた女性の証言は残されておらず「女性が性被害について語れなかった状況を想像した。毎年思い出し、手を合わせたい」と話した。

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