広島商―智弁和歌山 一回裏智弁和歌山1死一塁、山下が先制の適時三塁打を放ち、喜ぶベンチの選手たち=伊藤進之介撮影

(30日、第97回選抜高校野球大会決勝)

 智弁和歌山の選手たちには、忘れられない敗戦がある。

 昨夏の全国選手権。優勝候補の一角に挙げられながら、初戦の2回戦で霞ケ浦(茨城)に4―5で負けた。2年生(今の3年生)5人が出場したが、軟投派左腕にほんろうされ、攻守でミスが目立った。

 「2年生のせいで負けた」。試合の後、中谷仁監督からは、そう言われた。

 1番打者だった福元聖矢は5打数無安打3三振。「いつも振らない球まで振ってしまった」と言えば、2番打者で1安打に終わった藤田一波(かずは)も「それぞれが『打ちたい、打ちたい』だった」。

 1年生の春からベンチ入りしている選手が複数いても、個々の能力が高いだけでは全国で勝てない。そんな現実を突きつけられた。

 「全員が同じ方向を向かないと、日本一のチームにはなれない」。昨秋の新チームが始まると、主将の山田希翔(まれと)の呼びかけで、選手たちだけのミーティングが始まった。

 場所は誰も使わない「予備教…

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