障害のある人たちに不妊手術を強制した旧優生保護法(1948~96年)を違憲とした7月の最高裁判決を受け、小泉龍司法相が2日、原告らと面会し謝罪した。各地で続く訴訟には、手術実施の有無をめぐり国が事実関係を争っているものがあるが、小泉法相はこうした訴訟についても、和解による早期解決を検討する姿勢を示した。
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原告側の求めで実現した面会には支援者らも含め約90人が出席。約2時間の面会は、すべて公開された。
原告側は、係争中の訴訟の早期解決を求める要請書を提出し「多くの被害者の手術に関する直接的な証拠が失われているのは、国が優生手術被害を被害と認めないまま長期間放置したからにほかならない」「優生手術の実施をことさらに争い、高度の蓋然(がいぜん)性をもった立証を求める態度は改められるべきだ」と訴えた。
これに対し小泉法相は「事実関係の有無の争いもあるが、話を伺い、実情がよくわかった。我々が皆様に負担をかけてきたのであり、この問題をクリアしていくよう指示したい」と語った。
原告側は、法務省の前身の法務府が49年に旧厚生省の照会に「本人の意思に反しても手術ができる」などと回答したことにも言及。小泉法相は「回答によって、旧優生保護法の執行が大きな過ちを犯すに至った。我々法務省は大きな責任を負っている」と応じ、「言葉に尽くせぬ申し訳なさで、真摯(しんし)に反省し、心から深く謝罪を申し上げる」と述べた。
小泉法相は「自分が差別を受ける側であれば、自分がそこにいたらという想像力こそ、信頼関係を育む土壌になる。法務省がそこにまだ至らなかったことについて、改めて深くおわびを申し上げる」とも語った。
7月3日の判決後、こども家庭庁の加藤鮎子こども政策担当相や岸田文雄首相が相次いで原告らと面会し、謝罪。岸田首相は、原告らの高齢化などの事情も踏まえ、係争中の訴訟について和解に向けた対応を急ぐよう加藤氏や小泉氏に指示しているが、手術実施の有無が争われている訴訟も含まれており、国の対応が焦点の一つとなっている。(久保田一道)