奈良県葛城市の当麻寺中之坊が、境内にある国登録有形文化財「稲荷社」の修復費用の捻出に苦慮している。相談を受けた奈良市の旅行会社が、寄付を兼ねた見学ツアーの参加者を募っている。
稲荷社は古代の豪族、葛城氏が信仰していた豊受大神(とようけのおおかみ)の社殿で、今の社殿は江戸時代に建てられた高さ3・3メートルの入り母屋造り。複雑な造りの檜皮(ひわだ)ぶきの屋根を持つが、風雨で傷みが目立つように。11月から約半世紀ぶりのふき替え工事を始めたが、総事業費は1500万円かかる見込みだ。
中之坊では、安土桃山時代に造られた大和三名園のひとつ「香藕園(こうぐうえん)」(国史跡・名勝)や中将姫像の改修・修繕にも取りかかっており、松村實昭貫主(かんす)(52)は「装飾性が高く工芸品のような稲荷社の修復にぜひご協力をお願いしたい」という。
今回、奈良市の旅行会社「ちとせなら」が協力。7日午前10時と午後1時の2回、稲荷社の修繕現場を見学するほか、「香藕園」の非公開部分も特別に見ることができる。代表の岡下浩二さん(37)は「檜皮ぶきの作業の様子を、専門家の解説付きで間近で拝見できるのは貴重な機会」と参加を呼びかけている。
ツアー参加費4千円とは別に1万円の寄付を募る。定員各12人。申し込みは同社(https://chitosenara.com/