2025年秋冬シーズンのパリ・ファッションウィーク(PFW)は6日目の8日、日本のコムデギャルソンやエルメスなどが公式ランウェースケジュールで新作を発表した。この日はコムデギャルソン、ジュンヤ・ワタナベ、ノワール・ケイ・ニノミヤと、コムデギャルソンの3ブランドが一挙に新作を披露する「ギャルソンデー」。PFWの各公式ショーを回る人々の間では、この3ブランドの着用率が突出して高くなる。
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ジュンヤ・ワタナベ
午前9時30分からはジュンヤ・ワタナベ。オペラ座ガルニエ宮から程近いパリ中心地のど真ん中の空きビルにV字形のランウェーを作り、それぞれの方向からモデルが歩く形式だ。V字の先端がフォトグラファー席になっている。
冒頭に披露されたのは渡辺淳弥がここ数シーズンにわたって続けているキュビスム的なアプローチの新作群だった。その後も、フェイクレザーの角張ったライダースジャケット、シューズメーカー「ドクターマーチン」との協業で袖のパーツがブーツになっているアウター、鋭角のシルエットが際立つトレンチコート、巨大化されてアウターではなくドレスになったフライトジャケットなど実験的な装いが続いた。
ルドヴィック・ド・サン・セルナン
この後に予定されていたのは午前10時30分からのルドヴィック・ド・サン・セルナン。左岸のモンパルナス付近で、公共交通機関での移動では間に合わないので主催者が準備したシャトルバスを利用した。バルマンを経て自身のブランドを設立し、アン・ドゥムルメステールのクリエーティブディレクターも経験したフランス人デザイナーによるスタイルには、ミニマルと官能的な要素が共存している。女性モデルに続いて男性モデルもコルセットで登場するなど、ジェンダーとは何かという問いかけも感じたコレクションだった。
ノワール・ケイ・ニノミヤ
続いては午後0時30分からのノワール・ケイ・ニノミヤのショーへ。この日のコムデギャルソン3ブランドは全て同じビルでショーを開くため、再びバスに乗り込んで右岸の中心部に戻った。
ジュンヤ・ワタナベは1階にランウェーを設置していたのに対し、ノワール・ケイ・ニノミヤは3階。階段を上ると、暗闇の中でブラックライトが光っていた。音楽が流れてもスポットライトは点灯せず、ブラックライトによって浮かび上がる素材の装飾をつけた服のモデルが歩いてきた。その後は通常の照明になり、色とりどりのリボンだけで作られたドレスなどが披露された。このブランドはショーでストレートな創作表現を見せ、その要素を実際の商品に落とし込むのがうまい。コムデギャルソンの関係者は「しっかりと売り上げの数字を作れるブランドに成長した」と話す。ショーでも登場した、ゴールドのスニーカーは近年リーボックと続けている協業アイテムだ。
ヴィヴィアン・ウエストウッド
このショーが終了したのは午後0時40分ごろ。20分後にはヴィヴィアン・ウエストウッドのショーが控えていた。場所はマドレーヌ寺院近くと徒歩圏内なので早足で向かった。
ヴィヴィアンは22年末に他界したが、現在デザインを手がける夫アンドレアス・クロンターラーはヴィヴィアンの生前からブランドを支え続けてきた人物だ。男性モデルがジャケットとスカートのセットアップにヒールのついた靴を履いて登場するなど、ジェンダーへの意識が高かった創始者を思い起こしたショーだった。
この日は国際女性デー。クロンターラーはフィナーレでミモザの花束を持って登場し、女性たちに配って回った。そして、その花束を最後に受け取ったのは日本の双子ユニットAMIAYAだった。
エルメス
この日はとにかく、PFWのなかでも人気も注目度も高いブランドのショーが続く。お次はエルメスだ。
今季のエルメスはモノトーンをベースに、シャープな感じが際立つコレクションだった。いつになく速いスピードで歩くモデルたちが、その印象を更に強くする。特に秀逸だったのはレザーなどの皮革アイテムの数々。レザーのシャツを着用し、その裾をレザーのパンツにインするようなスタイルが、とても格好よく見えた。
モデルたちの多くはバーキンやボリードといった人気のバッグを手にしている。店舗では常に品薄状態だが、ショーでは頻出。「永遠の憧れのブランド」であり続けるメゾンの戦略の一つともいえるのではないか。
コムデギャルソン
この日、最後に訪れたのはコムデギャルソン。ジュンヤ・ワタナベ、ノワール・ケイ・ニノミヤの会場と同じビルの2階で開催された。川久保玲がこれまで続けてきた、布を縫い合わせて袋状にした生地を使ったものや、緩やかな曲線が目立つドレスなどで構成されており、テーマは「SMALLER IS STRONGER」。大手グループを中心に回る現代のファッション業界に対して、独立資本で長年戦い続けてきた川久保による痛烈なメッセージだった。
【動画】2025年秋冬の新作を発表するミラノとパリのファッションウィークが開催。会場には日本や韓国などアジアのスターも数多く訪れた=後藤洋平撮影