パリ・ファッションウィーク(PFW)の2025年秋冬コレクションは2日目の4日、世界最大手のファッションコングロマリットLVMHの中でも最高級だとされるディオールがショーを開催。韓国のトップアイドルなど著名人が続々と駆けつけた。この日も日本ブランドが立て続けに公式スケジュールでショーを開催。特に35周年を迎えたアンダーカバーは、各国のメディアやバイヤーたちから称賛された。
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マメ・クロゴウチ
この日は午後1時に開催予定のマメ・クロゴウチのショーから取材を始めた。日本で多くの女性から支持され、音楽ユニットPerfumeの衣装などにも多数採用されてきたブランドだ。このブランドのショーは毎回、和食レストランやギャラリーなどがあるマレ地区の「オガタ・パリ」で開催されている。シーズンごとのインスピレーション源も展示されるのが恒例で、今回は漆器や日本の餅が目に入る。
実際に開始したのは午後1時32分で、ファーストルックは襟の高いジャケット。なるほど確かに、色も雰囲気も漆器といわれたら、そんな感じもする。モヘアのニットは軟らかい餅のイメージだろうか。
ディオール
終了後は同2時30分にパリのど真ん中、チュイルリー庭園特設会場で開催されるディオールのショー会場へ向かう。PFWのメインイベントの一つであるディオールには、各国の人気著名人も訪れる。会場前は招待客と見物客で既にもみくちゃ状態。なんとか場内に入れたのは、開始予定時刻を大幅に過ぎた同2時48分だった。
セレブたちの多くは既に着席済み。韓国からやってきたアイドルグループSEVENTEENのミンギュは屈強な男性たちから鉄壁ガードされていたが、スマホのカメラを向けると手を振ってくれた。まだショーが始まる気配はないのに護衛の担当に「向こうに行って。早く自分の席に着いて」と促されるたび、ブランド側は来場したセレブのことをメディアに掲載してほしいのか、してほしくないのか分からなくなる。
その直後、BLACKPINKのジスが会場へ。BLACKPINKのメンバーはBTSと並び、近年のファッションウィークに招かれるゲストたちの中でもトップクラスの人気で、各国のメディアが撮影に殺到した。
日本からも俳優の新木優子が来場。こちらは穏やかな表情で撮影に応じていた。
ショーは35分遅れの午後3時5分に始まり、同28分まで続いた。だいたい長くても15分ぐらいの構成が多いので、これはかなり長い部類だ。メタリックな素材のアウター、ベージュと黒を合わせたスタイリングなどは、デザインを手がけるマリア・グラツィア・キウリがこれまでディオールで手がけたきたコレクションの集大成のようにも思えた。
アンリアレイジ
その後は日本のアンリアレイジのショーが開かれるアメリカンカテドラルへ。メゾン・ミハラヤスヒロやウジョーなど、PFWに公式参加する他の日本勢もショーを開催してきた場所だ。アンリアレイジは国内のメーカーと生地を共同開発するなどの協業も多い。今回は京セラとのコラボレーションで、服全体がスクリーンのようになり、そこに映像が流されるという未来的なコレクションだった。
アンダーカバー
この日最後のショーは凱旋(がいせん)門から程近いエリアで開催された、創立35周年記念のアンダーカバー。デザイナーの高橋盾が、これまでの自身のベストだったという04年秋冬コレクションを生まれ変わらせるというテーマだった。当時はフランスのぬいぐるみ作家アンヌ・ヴァレリー・デュポンの作品と歌手パティ・スミスのスタイルが着想源だった。
今回発表されたコレクションの前半はカジュアルな装いでチャンピオンとの協業アイテムが多数。確かに背中には、ぬいぐるみのような「縫い目」とタグが見える。
そして、後半に入ると造形的で大ぶりなドレスや、背部に天使の羽根が生えているような装飾たっぷりのミニ丈のドレスなど、前衛的な装いがたたみかけるように登場した。しばらくすると照明が落とされ、BGMもブツリと切れて突然の終幕。フィナーレでモデルたちが全員登場するという、SNSでの投稿に便利で、ありふれた演出とは無縁の幕切れだった。
場内には歓声と拍手が続き、しばらく誰も席を立とうとしない。アンコールを求めるかのような手拍子も起きたが、高橋がバックステージから出てくることはなかった。
演出を担ったのは若槻善雄。コムデギャルソンの川久保玲ら、大御所を含む日本勢が絶大な信頼を寄せてきたベテラン演出家だ。アンダーカバーの新作群が素晴らしく見えたのは、ショーの展開とマッチしていたことも大きかった。見せ方も含めてファッションだと改めて感じたショーだった。