広島商―東洋大姫路 七回裏東洋大姫路無死一塁、末永に四球を許し、マウンドで徳永(右)に声をかける捕手柳井=小玉重隆撮影

 (24日、第97回選抜高校野球大会2回戦 広島商6―2東洋大姫路)

 「3点まで取られてもいい。ストライクを先行させよう」

 広島商の捕手、柳井晶翔(あきと)がマウンドに行き、先発徳永啓人にそう声をかけたのは、6点を先制した二回の守りだ。徳永は得意の変化球が上ずり、2死一、二塁とピンチを広げていた。

 次打者には、3ボールになってから直球を連投させた。球速は130キロ前後。強打の東洋大姫路に大胆な配球だが、ファウルでカウントをとれていたこの日の直球の強さを、柳井は信じていた。「低反発バットで長打も出にくい。恐れずにいけました」。見逃し三振で、流れをものにした。

 変化球が決まり出したのも、柳井の肝の据わったリードがあってこそ。「ストライクゾーンで勝負できるよう、コースぎりぎりではなく、ベース上でミットを構えていた」という。

 六回に四球などで1死一、二塁となった時もマウンドへ。「打撃がいいチームに今は無失点。打たれていい。ストライクを投げてこい」。そんな言葉が徳永を楽にした。徳永は「柳井は相手の隙をしっかり見つける。とても頼りになる」と感謝する。

 昨秋から、気持ちで投げるタイプの徳永の時は度胸がある柳井、1回戦のように打たせるタイプの大宗和響(かずき)が先発する試合ではセオリーに忠実な配球をする片岡亮祐がマスクをかぶっている。

 荒谷忠勝監督にすれば正捕手がいないからだが、「苦労してる部分でこう結果が出るというのは、奇妙なもんだな、と思います」。競争がチーム力を底上げしている。

 広島商は23年ぶりの準々決勝進出。投手の長所を引き出す絶妙な「複数バッテリー制」が、古豪復活を呼び込んでいる。

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