ドスーン。ドスーン。屋内ブルペンに、重厚感のある音が響く。楽天から巨人に移籍した田中将大が、3メートルほど前に設置された防球ネットに1球、また1球と投げていた。
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下半身をゆっくりと移動させ、高いリリースポイントでたたきつけるように右腕を振る。約1時間後、「疲れました」。言葉とは裏腹に、どこか心地よさそうに話した。
つきっきりでアドバイスしていたのは、久保康生巡回投手コーチ。阪神やソフトバンクなどでコーチ経験がある66歳は、菅野智之(現オリオールズ)の投球フォームを変えて、昨季は最多勝に導いた。今キャンプでの田中将への指導は、阿部慎之助監督の意向という。
久保コーチは、田中将が楽天に在籍していた2013年に24勝を挙げた当時の投球フォームを映像で分析した。それと比較すると近年はリリースポイントが低く、球に力が伝わっていない。だから初日は、高い位置から投げる動作を取り戻すことに主眼を置いた。
日米通算197勝の田中将は昨季、未勝利に終わった。楽天が提示した大幅減俸に納得できず、求めた新天地。「投げている感覚はだいぶ違う」。復活へ向け、新しい投球フォームを少しずつ固めていく。=宮崎