赤ちょうちんが誘う「ほてい」=2025年8月7日、熊本県西原村、東野真和撮影

現場へ! 復興へのともしび(3)

 熊本県西原村、阿蘇くまもと空港から2キロの県道沿いに、赤ちょうちんが揺れる居酒屋「ほてい」がある。お盆前、西原村長の吉井誠(56)が幼友達や職員らと暑気払いでテーブルを囲んだ。

 2016年4月16日未明の熊本地震本震で、布田川(ふたがわ)断層が走る西原村は民家の半数以上が全半壊する被害を受けた。1週間後、村役場の職員だった吉井は庁舎近くを歩くほていの主人・加藤政文(71)に駆け寄って声をかけた。

 「店、いつ始めると?」

昔話に花を咲かせる村長の吉井誠(手前)と「ほてい」店主の加藤政文=2025年8月7日、熊本県西原村、東野真和撮影

 吉井の自宅も全壊、同僚と庁舎に泊まり込んで被災者への対応をしていた。みんなで一息つく場所が必要だった。

 20年ほど前、水道料金の請求書が来る前に督促状が来たことに怒った加藤が、役場に怒鳴り込んできた。対応に困った同僚に泣きつかれた吉井は、謝りがてら飲みに行った。それ以来のつきあいだ。

「なるようにしかならん」

 2人は「がんサバイバー」としてのつながりもある。

 吉井は26歳の時に腎臓に4…

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