造成した宅地の活用が課題になっている自治体もある=2024年3月、岩手県陸前高田市、嶋田達也撮影

 東日本大震災の復興予算が今年度で一区切りとなることから、達増拓也知事は4日、上京して関係省庁を訪ね、来年度以降も必要な予算を確保するよう要望した。津波被災地では防潮堤や道路などハード事業はほぼ終了しており、焦点は被災者の「心のケア」などソフト事業にどれだけの支援が残るかに移っている。

 2021~25年度の「第2期復興・創生期間」では約1・6兆円、岩手県分として約1千億円の復興予算が確保されている。政府は26年度から5年間の予算規模を近く決める予定で、知事自ら「最後のお願い」をした形だ。

 達増氏は伊藤忠彦復興相との会談で、心のケア事業やなりわいの再生に関する事業の継続などを要望=表=した。

伊藤忠彦復興相(中)に要望書を手渡す達増拓也知事(右)。左は今井絵理子復興政務官=2025年6月4日、東京都千代田区、小泉浩樹撮影

 岩手県は第2期復興・創生期間で、被災者のメンタル面の相談にのる「心のケア」や生活再建を後押しする見守り・相談支援などのソフト事業を続けてきた。

 今年度は復興予算の「被災者支援総合交付金」を活用し、県こころのケアセンターで相談支援などを実施する事業に約4億円、社会福祉協議会に生活支援相談員を配置し、被災者の見守り・相談支援を実施する事業に約2億円を投じた。同交付金は今年度で原則終了するため、事業を続けるなら新たな財源確保が必要となる。

 県こころのケアセンターの相談支援件数は、19年度の7611件から24年度に9979件へ増えた。県幹部は「岩手は沿岸部の精神医療が手薄で、心のケア事業をやめると大変なことになる」と訴える。

 達増氏は要望後、記者団に「地震津波関係の復興は、15年で終わらせるという政府の基本姿勢があると感じた。復興事業だったので、前例にない手厚い支援を頂けた。何年で事業終了という機械的な定め方ではなく、実態に合わせた判断をしてほしい」と述べた。

復興関連の主な要望

・移転元地の利活用に向けた取り組みへの支援

・処理水処分に関する安全と安心の確保

・原発事故に伴う除去土壌の処分

・原木しいたけなどの産地再生対策の充実

・被災地域でのなりわい再生への支援継続

・児童生徒の心のサポートに対する財政措置

・被災地の伝承、発信に係る取り組みへの支援

東京電力福島第一原発=2025年2月21日、福島県大熊町、朝日新聞社ヘリから、小宮健撮影
復興庁が入る中央合同庁舎4号館=東京・霞が関

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