「最後の夏」が終わった7月下旬のあの日。吹奏楽コンクール神戸地区大会の会場からの帰り道で、兵庫高校吹奏楽部の坂本尚さん(3年)は、こう考えながら歩いていた。
「部活が好きなことだけがとりえの自分が、部長でよかったんかな」
関西大会をめざした挑戦は、思ったよりも早く、幕を閉じた。
吹奏楽のことを考えるのはつらい。でも、部長としての責任が頭によぎる。翌日にあった大学受験の模試は、集中できなかった。
そんな気持ちが続いていた数日後、誘いを受けた。
「サマーコンサートに出ようよ」
連載 ユーカリの樹の下で
コンクールにかけた夏。吹奏楽部の挑戦を追いました。
誘ったのは永井佑樹さん(3年)。坂本さんと同じアルトサックスで3年間、励まし合い、高め合ってきた。
ただ、永井さんは6月にあった部内オーディションでメンバーに選ばれず、最後のコンクールの舞台には立てなかった。本番では、自身が担ってきたソロを坂本さんが吹いた。
このまま部活を終えるのは悔いが残る。だから、誘った。
「最後は、2人で一緒に吹き…