九州大学病院(福岡市東区)で心臓手術を受けた後に寝たきり状態になった男性(当時74、提訴後に死亡)とその娘2人が、術式が適切でなかったなどとして約4500万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が9日、福岡地裁であった。
加藤聡裁判長は「医師に(術式の)説明義務違反があった」と原告の主張を一部認め、運営する九州大に約160万円の支払いを命じた。
判決によると、男性は2018年4月、冠動脈に異変があり、バイパス手術を受けた。その後に脳梗塞(こうそく)を発症し、意識障害を起こして寝たきり状態に。回復しないまま24年12月に死亡した。
主な争点は、人工心肺を使って心停止させて実施した「オンポンプ手術」と呼ばれる術式の是非。人工心肺を使わない「オフポンプ手術」という術式もあるが、判決は、異なるメリットとリスクのある二つの術式に関する説明義務を果たしたとは認められず、リスクを踏まえた上で手術を受けるか否かを患者が自ら決める、自己決定権を侵害したと結論づけた。
一方、どちらの術式を選択すべきかについて明確な基準はなく、手術自体は問題なかったと判断した。