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 午後6時になると、広島・尾道の街には鐘の音が響く。「一里聞こえて二里ひびく」と伝わる、千光寺の鐘楼「驚音楼」だ。かつて近くに住んだ作家・志賀直哉の「暗夜行路」にも「ごーんとなると直(す)ぐゴーンと反響が一つ、又(また)一つ、又一つ」と描写されている。

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2005年に復活した石鎚山鎖修行。一般の参拝客も挑戦できる=2024年10月17日午後1時5分、広島県尾道市、上田潤撮影

 尾道三山の一つ大宝山(通称・千光寺山)の中腹にあり、806年に唐から帰った弘法大師が開いたとされる。境内には山からせり出すような本堂、かつて輝く宝玉が載っていたという巨大な「玉の岩」などが並んでいる。

 参拝客も挑戦できる千光寺の石鎚山鎖修行

 「くさり山」からの眺めが格別だと聞き、鎖を伝って登ることに。2台のカメラを岩にぶつけないようストラップをたすき掛けにし、カメラを背負う姿勢で心を無にして登った。岩の上では、眼下の尾道水道と本堂、岩を登る参拝客の配置を考え右往左往。事前に撮影許可を得ていた女性を、広角レンズで撮影した。

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 「鐘楼の所からは殆(ほとん)ど完全に市全体が眺められた」と志賀が書いた通り、眺めの良さは知られていたようだ。江戸後期の「尾道浦絵屛風(びょうぶ)」(林寅山)は、ちょんまげを結った男性らが本堂から望遠鏡をのぞく様子を描いている。

写真・図版
断崖絶壁に立つ鐘楼。地域の「時の鐘」として、元禄初年から時刻を報じてきた=2024年10月17日午後0時28分、広島県尾道市、上田潤撮影

 時を経て、今では多くの外国…

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