会場が急に静まりかえった。参加者がペンでメモを取る音だけがした。
2005年8月、初めての日中共同世論調査結果が発表された北京のフォーラム会場での出来事だ。冷え切った両国関係の中で、双方の市民の意識を探る調査を日中共同で実施できたことを、言論NPO代表の工藤泰志さんは「奇跡のようだった」と振り返る。
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その年の春、小泉純一郎首相の靖国参拝などに反発し、中国各地で大規模な反日デモが起きた。調査はその余韻が残る中で行われた。相手国に良い印象を持っている人は双方とも10%台。日本を軍国主義と認識する中国人が6割もいた。双方の国民感情の悪さをさらけ出す内容だった。
工藤さんは前年秋に初めて北京を訪れ、政府関係者やメディア関係者に民間同士の対話をしたいと訴えていた。最初は相手にされなかったが、両国関係の悪化に危機感を持っていた中国側も次第に理解した。世論調査もやりたいと提案すると、「学術目的でなら」と応じたが、結果の公表については難色を示した。
中国側からの承諾はないまま
「調査結果が中国国民を刺激…