五回に同点に追いつく三塁打を右翼に放つ佐賀農の浜村幸輝主将=2025年7月16日、さがみどりの森

 (16日、第107回全国高校野球選手権佐賀大会準々決勝 佐賀農3―4有田工)

 有田工にサヨナラ負けした佐賀農の主将、浜村幸輝選手(3年)は「去年の優勝校にこれだけの試合ができたのがうれしい」と晴れやかだった。

 小刻みに得点され、四回までに3点リードを許した。「下手すればコールド負けになってもおかしくない展開」(平野真司監督)だったが、ベンチの中は違った。浜村選手は「雰囲気を悪くしたら自分たちは負け。雰囲気だけは崩さないような声かけをしていた」。

 急成長の夏だった。新チームになった昨秋から公式戦は地区大会も含め1勝もできなかった。平野監督は「最後まで成長するのがチームの課題。1戦、1戦、成長した結果が今日につながった」と振り返る。開幕戦を制して勢いに乗り、3勝を挙げ昨夏に続き準々決勝まで駒を進めた。

 五回の同点劇は成長の証しだ。簡単に2死を取られた後、9番打者が四球を選ぶと、単打と二塁打で1点を返した。なお、二、三塁から浜村選手が追いつく三塁打。「チーム全員のあきらめない気持ちが、あの回にぎゅっと詰まっていた。自分たちの強みの連打が出た」と胸を張った。試合後、時折、笑顔もみせたのは、「みんなは悔しがるので、(自分は)支える側にいられたら」。大黒柱として、なかなか勝てなかったチームを引っ張ってきた。

 少しの悔いは、兄に白星を届けられなかったこと。勇伸(ゆうしん)さん(23)は5年前、コロナ禍で選手権大会が中止になった時、佐賀農の主将だった。昨夜、「『負けん』という気持ちでいけ、勝てない相手じゃないぞ」とLINEでメッセージをもらった。「今日が誕生日、勝利の誕生日にしてあげたかったんですけどね」

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