シンプルな顔つきが人気で急成長しているスイスの高級腕時計ブランド、パルミジャーニ・フルリエ。2021年に最高経営責任者(CEO)に就任してブランドイメージを一新したグイド・テレーニ氏に、どんな思いで時計づくりに臨んでいるのかを聞いた。
――2年前にあなたがCEOに就任し、細かい彫りを施したダイヤルと秒針のない2針の時計「トンダ・PF」が発表されてから、パルミジャーニ・フルリエは人気ブランドになりました。デザインが洗練され、ブランドイメージが一新された印象です
以前に出していた時計は、我々としては「商品」とは考えていません。トンダ・PFを世に出した21年からブランドが始まったと捉えています。
――「トンダ・PF・GMT・ラトラパンテ」(22年)は機構の使い方が独特でした。通常は二つのタイムを同時に計測するためのクロノグラフに用いる機構「ラトラパンテ」を、離れた2カ所の時刻を示すGMT機能として初めて用いましたね
トンダPF・GMTは、あえて商品名に「ラトラパンテ」を入れました。多くの人は、ラトラパンテといえばクロノグラフだと認識していることを逆手に取ったのです。発表した時、イタリア人記者から「クロノはどこにある?」と質問され、してやったりと思いました。
――パルミジャーニ・フルリエではデザインはもちろん、どんな機能をどう搭載するかまで、グイドさんが権限を持っているのでしょうか
確かにデザインチームを統率しているのは私ですが、主にチームと話し合って決めています。特にGMTは、私が入社して3日目に商品開発チームとブレーンストーミングをして5分ぐらいでアイデアが湧いてきた。
GMTを作りたかったけれど、当時は新型コロナウイルスによるパンデミックのさなかでした。「またいつかみんなが旅ができるようになったら使ってもらいたい」と、シンプルなGMTを考えたのです。一方で、最高級にエレガントなものにもしたかった。つまり、旅行中ではない時にはローカルとホームの時刻の両方が表示されないものを作りたかった。そう思って、直感的にたどり着いた時計なのです。
――ブランドは急激に成長していますが、知名度のあるロレックスなどと比べて、パルミジャーニ・フルリエは上級者向け。現時点では「初めて持つ高級腕時計」として選ばれるブランドとはいえないと思います。知名度が高まっていることを背景に、今後は最初の1本の選択肢に入るようなブランドを目指すのでしょうか
ファッション界でも「クワイエット・ラグジュアリー」が流行だが
いいえ。時計に理解の深い人…