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【動画】イカナゴの稚魚の放流=兵庫県漁業協同組合連合会提供

 瀬戸内海に春を告げる魚として親しまれるイカナゴ。海の環境の変化により近年は漁獲量が急減し、兵庫県内の今年の漁は3日間で終わった。この状況を改善させようと、漁業関係者らは肥育したイカナゴの稚魚の放流に乗り出した。

 イカナゴの不漁は、海の貧栄養化との関係が指摘されている。県水産技術センターの研究によると、夏に肥満度が低下し、産卵数が減っていることが原因の一つと考えられるという。

 そこで、県漁業協同組合連合会(県漁連)は県内の漁業関係者と連携し、人工的に肥満度を高めたイカナゴの稚魚を放流する試験を始めた。

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放流されたイカナゴの稚魚=2025年6月11日午前9時25分、神戸市垂水区、宮坂奈津撮影

 11日、神戸市垂水区の塩屋漁港で地元の漁師が放流したのは、愛媛県で水揚げされ神戸市立栽培漁業センターで肥育したイカナゴの稚魚約2千匹。30日間で全長は約7センチから約9センチに、重さは約1グラムから3.5グラムに成長した。

 市漁業協同組合の山田幸治さん(48)は「人工的にえさをあげても、予想以上に大きくなった。海にも栄養があればしっかり成長し、漁獲量も増えると期待している」。放流で漁獲量の改善が見込めれば、規模を拡大させていきたい考えという。

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肥育させたイカナゴの稚魚を放流する兵庫県の漁師たち=2025年6月11日午前9時24分、神戸市垂水区、宮坂奈津撮影

 一方、近年の研究では人為的な稚魚の放流は海の種数を変化させ、生態系に悪影響を与える場合があることも指摘されている。

 県漁連の担当者によると、イカナゴは海の生態系の中では最下層に位置するため、放流による影響は少ないとみている。

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