性暴力、ジェンダー、性的少数者などへの社会の意識が高まるなか、性に関する絵本が人気を集めている。1万部を超えれば成功と言われる中、40万部を超えたヒット作も。人気の背景にあるものは――。
絵本の試し読みや購入ができるサイト「絵本ナビ」の磯崎園子編集長によると、性に関する絵本は以前は翻訳ものが多かったが、2021年ごろから急速に日本人による著作も増え始めたという。
きっかけの一つは、同年に発売された「だいじ だいじ どーこだ?」。産婦人科医の遠見才希子さんによる作品で、プライベートパーツ(口、胸、性器)をはじめとした身体の大切さを伝える内容だ。
発行する大泉書店によると、5月時点で部数は43万部を超えている。絵本業界のベストセラーはロングセラーやシリーズ累計で部数が増えていく作品が多いといい、担当者は「発売から数年でこの数字は異例のヒット」と話す。
磯崎さんは「小さな子どもにもわかりやすく、まじめに性を扱う絵本は珍しかった」という。「絵本ナビ」での性に関する絵本の売り上げも、20年と比べると数年で10倍近くに増えたという。今は「子どもに性を伝える絵本」という特集コーナーを作り、70以上の作品を紹介している。
磯崎さんは、子ども時代に十分な性教育を受けてこなかった30~40代の親世代の中には、我が子にどう性を教えたらいいかわからない人が多いと指摘する。「そんな親にとって絵本はとても助けになる。昔と違って様々な作品が出ているので、ぜひ子どもに合う絵本を探して読んでもらいたい」
【絵本ナビで人気の性に関する絵本】
「だいじ だいじ どーこだ?」(大泉書店)
「パンツのなかのまほう」(かもがわ出版)
「おちんちんのえほん」(ポプラ社)
「うみとりくの からだのはなし」(童心社)
「あっ!そうなんだ!性と生」(エイデル研究所)
「女の子のからだえほん」(パイ インターナショナル)
「性の絵本 みんながもってるたからものってなーんだ?」(KADOKAWA)
「サッコ先生と!からだこころ研究所 小学生と考える『性ってなに?』」(リトルモア)
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