性教育講演で、生徒たちに話をする桜井裕子さん。事前に学校と入念な打ち合わせをして実施している=2024年12月13日、埼玉県富士見市、大久保真紀撮影

 「肉食は悪くないです」

 助産師の桜井裕子さん(61)が体育館で中3の生徒約120人に語りかける。「好きな人と付き合いたい、深め合いたいというのは健康的なこと。でも、その先のことも考えたい」

 昨年12月、埼玉県富士見市立西中学校で行われた性教育の講演。

 「性的同意」とはどういうことなのか。対等の中で強制されず、行為ごとにお互いがはっきりOKすることが大切――。桜井さんはそう伝え、「消しゴムの貸し借りから体験学習してほしい」と呼びかけた。

  • 子どもたちが幸せになるための性教育を 連載第11部にあたって
  • 【そもそも解説】性教育の現状とは 日本と世界を比較して分かること

 もし妊娠したら? 中絶ができる時期や避妊方法、そして性感染症についても具体的に話した。「困ったときには相談するのが大切。でも、実際にはかなり難しいので、困る前に語れる仲間づくりも大切」

 約1時間の講演が終わると、男女を問わず、多くの生徒が桜井さんを囲んだ。生徒たちは子宮内に入れて妊娠を防ぐ避妊リングや、コンドームを興味津々で手にし、装着方法も試していた。

 学校でこうした授業を続けることは、生徒だけでなく先生の意識を変え、学校全体が変わる。多くの学校で性教育をしてきた桜井さんは、そう言う。「性教育は、人生を幸せにするためのもの。子どもの幸せのためにという思いで進めていってもらいたい」

埼玉県富士見市での市を上げての取り組みのほか、愛媛県宇和島市や富山市など、工夫して性教育を展開している自治体を紹介します。
このシリーズの次回の配信では、就学前の幼い子どもたちへの性教育について取りあげます。

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性教育講演の後、講師のところに来て、実際にコンドームの付け方などを学ぶ生徒たち。ちゃかす生徒はひとりもおらず、みな真剣そのものだった=2024年12月13日、埼玉県富士見市、大久保真紀撮影

■「性教育は人権教育であり…

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