東京の出版社に勤めていた頃、挨拶(あいさつ)に行った先で「チェンジ」と言われた。作家本人ではなく傍らに座る他社の編集者からで、作家は無言でニヤニヤしていた。おっさん二人が新入りの担当編集者を風俗嬢になぞらえて、「気に入らないから帰れ」というわけだ。
- 岡田育 ハジッコを生きる
雑誌編集部では別の著名人から、「二名分の弁当を持参して指定したホテルの部屋へ来れば独占取材に応じる」と言われた。「あいにく当店そういうサービスはご提供しとらんのですわ~」と返答した。入社して数年、自分の感情を脇へ置いて、何事もヘラヘラあしらう習慣がしみついていた。
後輩女性が取引先の年配男性…