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中条省平のマンガ時評

フランス文学者で様々な評論活動にも取り組む中条省平さんが、いま注目のマンガを解説します。

 今回ご紹介するマンガは、高妍(ガオイェン)の『隙間』です。

 高妍は、台湾出身の女性マンガ家で、日本で最初に出版された彼女の長編マンガ『緑の歌』を、すでに本欄で取りあげたことがあります。『緑の歌』は、台湾の少女の恋愛を瑞々(みずみず)しく描いた佳作で、村上春樹や細野晴臣に大きな影響を受けたことが窺(うかが)える内容でした。

 『隙間』の主人公は、22歳の台湾の女性・楊(ヤン)です。長いこと看病した祖母の死後、画学生として沖縄の県立芸術大学に留学してきます。

 彼女が日本にやって来たわけは複雑で、物語が進むにつれて、徐々に、その内面の理由が明かされていきます。

 ひとつは、心の拠(よ)りどころである祖母を亡くしたことですが、もうひとつは、楊の好きな男性Jにはすでに恋人がいて、Jの自分への好意は恋愛ではないと悟ったからです。

 しかし、このJとの関係には…

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