山本晃司さんの愛車「Z」。両親が20年にわたって保管していた=家族提供

 「エンジンの調子が悪いから、しばらくガレージに置いといて」

 今から30年ほど前、岡山県倉敷市の実家に帰省していた山本晃司さんは、そう言って赤い車を置いていった。

 中古で購入したという、真っ赤な「フェアレディZ」(S130型)。

 バイト代をためて買ったもので、これから友人たちと手を入れていくそうだ。

 当時、四国で大学生活を送っていたが、駐車場代がもったいないので実家に置きたいという。

 試しに助手席に乗せてもらった父・晃さん(82)は「かっこいいけど、乗り心地はイマイチやな」と思った。

 高専を卒業後、大学に入り直していた晃司さん。

 その理由について、母・富美枝さん(81)には「親のスネをかじりたいから」と言っていた。

 「人生で遊べるのは学生時代だけ。留年して30歳くらいまで大学生しようかな」

 一方で「雨漏りがしてきたこの家は、いつか俺が建て替えるから」とも言っていた。

 「親のスネをかじりながら、家を建て替えるなんて、できるわけないやん」

 父も母もそう思っていたが、まさかの形で現実になった。

 23歳の若さでバイク事故で亡くなり、両親に保険金を残したのだ。

青信号で交差点を直進中に

 1997年11月、高松市にある病院から倉敷の自宅に電話がかかってきた。

 「息子さんが事故で運ばれて…

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