住民基本台帳の提出をめぐる国の解釈と動き
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 「○○君 保護者様」

 「キミの力を輝かせる未来が、ここで見つかる」

 兵庫県尼崎市の50代の女性宅に昨年7月、こんな文言が書かれたはがきが届いた。当時中学3年生だった息子の名前が印字されていた。

 「なんやこれ。何で息子の名前が知られているの」

 差出人は「自衛隊兵庫地方協力本部西宮地域事務所」。

 裏をめくると、陸上自衛隊高等工科学校(神奈川県横須賀市)の入学案内が記されていた。

 「陸上自衛官を養成するための学校です。『技術的な識能を有し、知徳体を兼ね備えた伸展性ある陸上自衛官としてふさわしい人材を育成する』を理念としています」

 表面には、個人情報についての断りがあった。

 「住民基本台帳の写しの閲覧を通じて入手しております」

安倍元首相が「6割以上が協力拒否」、議論広がる

 自衛隊は自衛官募集のため、主に18歳と22歳を対象にダイレクトメール(DM)を送っている。

 リストアップに使われるのが、自治体が管理する「住民基本台帳」だ。氏名や生年月日、性別、住所などを記す住民票を編成したもので、選挙人名簿への登録や国民健康保険の事務処理などに使われる。

 自衛隊法は「都道府県知事や市町村長は自衛官募集に関する事務の一部を行う」とし、同法施行令は「資料の提出を求めることができる」と定める。一方、住民基本台帳法は「国や地方公共団体が法令で定める事務遂行に必要な場合」に閲覧できるとするが、提出の規定はない。

 個人情報の扱いをめぐっては、自治体や国を訴える裁判が各地で起こされています。住民基本台帳の「提出」は許されるのか。識者はどう見るのか。記事のなかで詳報します。

 2017年度は全市区町村の36%が提出、53%が閲覧に応じていたが、安倍晋三首相(当時)が19年の自民党大会で「6割以上が協力を拒否している」と発言し、議論が広がった。

 防衛省と総務省は連名で21…

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