午前10時半ごろ。チャーターした小型観光船が、沈没地点の「カシュニの滝」沖に停泊した。
僧侶による読経の声にあわせ、花を海に投げ入れる。「一緒に帰るよ」。泣き叫ぶような家族の声が聞こえた。船の警笛が鳴り響くと、全員で黙禱(もくとう)を捧げた。
船が動き出しても、家族の名前を呼ぶ声は海に響いていた。
北海道・知床半島沖で小型観光船「KAZUⅠ(カズワン)」が沈没した事故で、乗客家族が13日、遺体や遺品が見つかった知床岬付近に上陸。今は会えない家族との時間を過ごした。
沈没地点近くでの慰霊行事は初めて。乗客14人の家族40人が参加した。
行方不明の乗客・小柳宝大(みちお)さん(当時34)の父親(66)=福岡県=は「誰にはばかることなく、宝大という名前を大きな声で呼んで良かったからですね、やっぱりもう涙でいっぱいで……」。
事故が起きたのは2022年4月23日。乗客乗員20人が死亡し、6人の行方がわかっていない。
毎年、船の出発地ウトロ漁港…