連載コラム「彩々」 くらし科学医療部長代理・辻外記子

広兼房子さんは、息子・幹三さんの自宅介護を30年以上続けている=2025年6月、広島市西区、辻外記子撮影

このコラムは…

3人の記者が交代でつづるコラムです。身の周りで起きたことや取材の場で見聞きしたことを糸口に、いまの社会を読み解きます。多彩なテーマ、多様な視点をお楽しみください。

 忘れられない千羽鶴がある。平和や病気の回復を願う多くの鶴に出会ってきたが、中でも特別な鶴だ。

 長男幹三(かんぞう)さん(56)の自宅介護を30年以上続けてきた広島市の広兼房子さん(81)による鶴。34年前の交通事故の後遺症で体がまひした息子の無事を祈り、2万羽ほどを作っていた。

 6月、前回の取材から16年ぶりに自宅を訪れた。床ずれにならないよう数時間置きに息子の体の向きを変えてきた手の痛みは増し、鶴は折れなくなっていた。でも房子さんは巧みに息子の体の向きを変え続け、床ずれはできていなかった。

 以前の記事で房子さんを「前向き」と表現したが、どんな心情だったのかをもう少し知りたかった。

「運命じゃけ。受け入れるしか」

 改めて聞くと、「起きたこと…

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