稲沢市民病院=2024年3月29日、愛知県稲沢市、荻野好弘撮影

 愛知県稲沢市の稲沢市民病院が患者を死なせた医療事故をめぐる情報公開請求で、制度の異なる市個人情報保護条例を根拠に、診療や手術内容など一部の情報を非開示としたことがわかった。情報公開に詳しい専門家らは「条例の運用を誤った判断だ」と批判している。

何の手術?どんなミス? 病院側は説明せず

 遺族に2327万円の損害賠償を支払いながら、市がミスのあった手術内容などを明らかにしなかったことを受けて、朝日新聞記者が市行政情報公開条例に基づく開示請求や審査請求をした。

 自治体設置の病院では一定額以上の損害賠償を支払う場合、議会に議案を提出し、定例記者会見などで手術の経緯、ミス原因を明らかにした上で再発防止策を説明するケースが多い。

 この死亡事故も、市が2020年12月議会に出した議案で判明。当時の加藤健司・院長兼病院事業管理者(現・病院事業管理者)が記者に説明したが、「手術中の止血ミスで大量出血を招き、翌日に患者が死亡した」程度にとどまった。「遺族の要望」として、何の手術でどんなミスが起きたのかを話さず、再発防止策も具体性を欠いた。

審査申し立て 「一部公開」になったが…

 情報公開請求で21年3月、事故に関する文書の開示を求めたが、病院は事業管理者名で一切開示しない「非公開」を決定。記者は同年6月、市側に、患者を特定しない形で開示するよう審査を申し立てた。

 22年2月、事業管理者は元学校長や弁護士らでつくる市情報公開・個人情報保護審査会に諮問。審査会は今年2月、「非公開決定は妥当ではない」と一部公開を答申した。

 答申書によると、審査会は情報の開示・非開示を検討する際、行政情報公開条例に加え、個人情報保護条例も根拠とした。

 死亡年、死亡場所、示談内容…

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