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眠れない時にヒツジを数えるのは、英語で「sheep(ヒツジ)」と「sleep(睡眠)」が似ているから、など諸説ある

 一日が終わり、ふとんで横になる。悩み事があれこれ頭をよぎって眠れない。世間で言われる睡眠法も、なかなかうまくいかない――。そんな夜を重ねる人もいるのでは。江戸時代から続く寺の庵主(あんじゅ)として人々の悩み事相談に乗っている松山照紀さんに、眠れない夜とどう付き合ったらいいか聞いた。

「しなければいけない」から「ま、いいか」へ

 ――著書「駆け込み寺の庵主さん」でも明かされていますが、予期せぬ妊娠、結婚、離婚。そして大病。介護をしながら正看護師になり、マザー・テレサに傾倒したかと思うと出家して禅宗の僧侶に……。波乱の人生で、思い出される不眠の経験は?

 いろいろありますよ。信頼していた人に裏切られ、腹が立って眠れなかったこととか。准看護師の頃には、介護していた祖母が夜中の2時、3時にひとり歩き。止めても止めても外に出てしまうので、後ろからついていき、何百メートルか歩いてもらって。夜が明けると始発電車で出勤、という日々でした。

 ――年齢を重ねるにつれ悩みが多くなり、眠れない夜が増える気がします。

 「ちゃんと寝なきゃいけない」とみなさん考えがちですが、「○○しなければいけない」というのは、できていない自分を責める考え方。自分にダメ出しをしてしまう「ねばならない病」のほうが、実は根深い問題です。

 眠れないことにフォーカスするより、逆に起きていられる自分を喜んでもいいのでは。起きている、そう感じられることそのものが生きている証拠。そこにダメ出しをしないでほしいですね。もちろん過重労働による睡眠不足などは別問題ですが。

 そもそも、よく眠ったらもっといい自分になれるのですか? 幻想です。ひとつが満たされれば、別の何かが欲しくなる。それをぐるぐると続けるよりも、いい意味で妥協してほしい。「寝る時間、少ないけど、ま、いいか」と。

 ――見守る家族らも、つらい思いをしているのでは。

 どんなに好きな相手でも、代わりに寝てあげることはできませんしね。でも、なんとかしてあげられない責任感や罪悪感を過剰に持たないようにしてほしい。

 なぜ自分にダメ出しをしてし…

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