地元で人気の仕事に就き、順風満帆に見えた社会人生活。しかし、職場の先輩に心を打ち砕かれた。息抜きをしようと出かけた繁華街。冷やかしで行ったレズビアンバーのキャストに、全てを奪われた――。
利用客に多額の売掛金(ツケ)を負わせたりする悪質なホストクラブ対策を目的とした改正風俗営業法が、6月28日から施行される。こうした問題はホストクラブだけでなく、他の業態でも起きている。
なぜ被害者は「沼」にハマってしまうのか。2年弱で約3千万円を費やしたという女性(26)が取材に応じ、体験を語った。
- 悪質ホスト対策の改正風営法成立、6月下旬に実施 好意つけ込み禁止
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東北地方出身の女性は、幼少時は親から「頭が悪くなる」とテレビや漫画を制限された。高校では電卓、珠算、簿記など数多くの検定に合格し、指定校推薦で大学へ。卒業後は地元の農協に就職し、金融の窓口業務の担当になった。
そこで遭遇したのが、契約社員として働いていた先輩の50代女性だった。
ある日、小銭を数えていると「やり方が違う! お札から数えて」と怒鳴られた。
別の日には、引き出しにファイルを横向きに入れると、大きなため息とともに荒々しく縦向きに変えられた。
他の同僚に確認したが、数え方にもファイルの置き方にも特に決まりはなかった。
先輩は古株が多い他の同僚たちには何も言わず、職場で唯一の若手だった女性に対してだけ、「マイルール」を突きつけてきた。
イヤミや怒声はことあるごとに職場に響き渡ったが、同僚たちは同情的な視線を送るばかり。誰も手を差し伸べてはくれなかった。
半年でうつ病と診断された。だましだまし働き続けたが、結局、1年もしないうちに休職を余儀なくされた。
何の気力もわかず、ベッドに横になったまま1日が過ぎる。数カ月すると、家族から「家にいるのに何もしないなんて」と非難され、肩身が狭くなった。
県外にいた友人に相談すると「うちにおいで」と言ってくれ、東日本のある都市に逃げるように移った。
甘い言葉と「匂わせ」投稿、繰り返した「遠隔」
ある日、息抜きをしようと1人で繁華街に出かけた。行き先は大学時代に一度だけ「冷やかし」で行ったレズビアンバー。非日常の空間で楽しかった学生時代を懐かしみたいとの気持ちだけだった。
暗い店内には、キラキラ光る電飾と色とりどりの酒。体をぴったり包んだ衣装を身にまとった女性キャストが迎えてくれた。
スポットライトの下ではキャストが妖しげに踊り、ソファ席ではシャンパン片手に客と話し込む。指名が重なるとより高額の注文をした客にキャストがつき、高級な酒が注文されると店内にマイクアナウンスが入るシステムだった。
女性の卓についたのは一回り…